お題、八十八歳。
その中でこんな傑作に出逢えたことに感謝申し上げたい。
齢八十八歳を迎える指揮者の語りで奏でられる一つの物語。
彼が言うには、指揮者には「無い」ものがいくつかあるそうだ。
三つの「無い」ものを語りながら、旋律を奏でまとめ上げることができる唯一の存在——指揮者だからこその視点で語られる、現代の社会、そして人として大切であろうこと。
様々な曲調のオーケストラの中、指揮者とは楽器を持たずして演奏し、そして一番その混沌とした音の中で闘っている存在でもある。
指揮者が持っているもの、そして指揮者に「無い」もの。
最後の数行に心からの拍手をお送りしたい。
こんな世の中だからこそ、ぜひ読んでほしい一作です。