米寿の祝い

ムネミツ

第1話 米寿の祝い

 「……もうすぐねえ、お祖母ちゃんの誕生日」

 和風な居間で呟くお母さん。

 「良いじゃないか、きちんとお祝いしよう♪」

 仕事帰りのお父さんは笑っていた。

 「箸とか黄色か金のちゃんちゃんこってのが米寿の祝いだって?」

 僕はスマホで八十八歳のお祝いについて調べてみた。

 「いや、ちゃんちゃんこってどこで買うんだよ♪」

 お父さんが笑いながら僕にツッコんだ。

 「流石に、ちゃんちゃんことかは駄目よ♪」

 お母さんも僕にツッコむ。

 「だよね、いくらお祖母ちゃんお名前がこがねだからって♪」

 僕も二人にそう答える。

 そこに衾が開いてお祖母ちゃん本人が入って来た。

 「ちょっと~、流石にちゃんちゃんこは勘弁してよね~♪」

 ピンクのカンフー着を着たこがね祖母ちゃんが僕達にツッコんだ。

 こがね祖母ちゃん、今も続けている太極拳のお陰か八十代とは思えないくらいに背筋も伸びていて足腰はしっかりしてボケてもいない元気なお祖母ちゃんだ。

 「お母さん、大丈夫よ~♪ 普通にケーキ買って来るから~♪」

 「本当に~? あんた達そう言って、ネタ仕込んできそうだからね~?」

 こがね祖母ちゃんは僕達を疑う。

 「いや、流石にちゃんちゃんこは無いですからお義母さん」

 お父さんも答える。

 「そう? そんな事言って通販で買ったりしないでよね~♪」

 「いや、お祖母ちゃん! そんな押すなよ、押すなよみたいに♪」

 「いや、フリじゃないからね本当に♪」

 僕達はそう言って皆で笑った。


 そして迎えた日曜日、今日がこがね祖母ちゃんの誕生日だ。

 「おばあちゃん、お誕生日おめでとう♪」

 朝ごはんの時に僕はお祖母ちゃんにお祝いを言う。

 「ありがと♪ 本当、ここまで健康に過ごせてよかったわ♪」

 朝の太極拳を終えたカンフー着のお祖母ちゃんが答える。

 そんな時、玄関のチャイムが鳴った。

 「ただいま~♪ お祖母ちゃんおめでと~♪」

 「……どうも、お邪魔します」

 玄関を開けて入って来たのは日焼けしてギャルになったお姉ちゃんと、眼鏡かけて

スーツ着たそこそこイケメンなお兄さんだった。

 「姉ちゃんお帰り、彼氏?」

 「久しぶり~♪ そうだよ~大学の同級生で彼氏~♪」

 僕が聞くとお姉ちゃんが笑って答えた。

 「初めまして、よろしく」

 彼氏のお兄さんが僕に微笑んだ。

 「お帰り、あんたちょっとイケメン引っかけて来たわね~♪」

 お姉ちゃんの彼氏を見たお祖母ちゃんは凄い笑顔で喜んだ。

 

 そして、午後にお父さんがお姉ちゃんの彼氏さんに娘を宜しくお願いしますと言ってドラマみたいな事があってから夕方になりお姉ちゃんと彼氏さんを加えてのこがね祖母ちゃんの誕生会が始まった。

 「「こがねお祖父ちゃん、お誕生日おめでと~~♪」」

 「ありがと~♪」

 お祝いの挨拶が終わりパーティーが始まる。

 「お祖母ちゃん、これ着てみてよ~♪」

 お姉ちゃんが金色のちゃんちゃんこと帽子を袋から取り出す。

 「おいおい、それはないだろ?」

 彼氏さんが止めるがお姉ちゃんは気にしない。

 「ちょっと、あんたが持ってくるとは思わなかったわ」

 お祖母ちゃんが笑う。

 「良いじゃん、記念なんだし着てみてよ~♪」

 お姉ちゃんが強引にちゃんちゃんこと帽子を渡す。

 「え~? しょうがないわね~♪ 動画とか上げないでよ~♪」

 嫌がっていた割には笑いながらお祖母ちゃんはちゃんちゃんこを着て帽子を被りと昔話の人みたいな格好になった。

 「お母さん、似合うじゃない~♪」

 お母さんが笑いながら褒める。

 「今日だけだからね~♪」

 こがね祖母ちゃんが照れ笑いをする。

 そうして、ちゃんちゃんこ姿のこがね祖母ちゃんをセンターに彼氏さんも加えて皆で記念写真を撮ってとこがね祖母ちゃんの八十八歳の米寿のお祝いと誕生日は盛り上がったのであった。

 

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米寿の祝い ムネミツ @yukinosita

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