第121話 うさみみ交渉術。
「戦いなさい! 勝った方を雇わせて貰うわ!」
「いやもうそのくだり終わってんだわ。展開が遅せぇ」
結局、依頼をブッキングした全員で依頼人の元に赴いた。
ロアの町にあるちょっとした屋敷で、まぁ金持ちなんだろうなって感想が出て来る邸宅だ。
そんな屋敷のゲートキーパーに要件を告げて玄関まで案内して貰い、玄関でノッカーをゴンゴンして人を呼ぶ。
ノッカーって言うのはアレだ。ライオンが輪っかを咥えた様なデザインで、輪っかがプラプラしてて、その輪っかを持ち上げてから落とす形でドアをノック出来るアイテムだ。
お金持ちっぽい洋館の入口にだったら多分ついてるぞ。
で、まぁノッカーをゴンゴンして人を呼び、「お前絶対名前がセバスチャンだろ」って感じのイケオジに案内され、やっと依頼人と顔合わせ。
こっちの要件としては「ブッキングしたんだが? どういうこと?」これに尽きる。
まぁうん。イベントフラグなんだろって思ってるから「どういうこと?」もクソも無いんだけど。
そして冒頭。強かった方を雇うから戦いなさいと言い放つ金髪幼女。
でも決闘は既に終わってんだよなぁ。
「ならその勝者を雇うまでよ!」
「だから違ぇって。誰が仕事受けるのかはもうナシついてんの。そうじゃなくて、私たちはお前に『なんでブッキングなんてしたのか』を聞いてんだよ。分かったかちびっ子?」
「誰がチビよ!」
「お前だよ」
金髪幼女。金髪幼女である。
もっと言うとツインテールな。コッテコテの金髪イキり幼女だ。お手本の様なイキり幼女だぞ。なんだ、教科書にでも乗せる気か? それともメスガキ図鑑にでも乗せるのか?
「ふんっ、私はそんなの知らないわ!」
「嘘だな」
クエスト関連の管理は、パッと見はNPC達が行うように見えるが、その実、専用システムが走っててミスなんて起こらない。普通にシステムが処理してるので、ヒューマンエラーでブッキングは有り得ない。
ゲームシステム的にダブルブッキングは有り得ない。それでも起こったなら、システムがヒューマンエラーを装ってるって事だ。その場合のイベントはギルドで起きるんだろうが、フラグ所持者であるヒナと少年達がギルドに揃ってもイベントは起こらなかった。
ギルド職員のミスって
つまり、ヒューマンエラーを装ったフラグじゃない可能性が高いのだ。
「お前、最初から依頼を二重に出してるだろ」
なら残ったのは人為的に誘発されたダブルブッキングだ。メタ推理で申し訳無いけどな。
私の予想では、恐らくコイツは出した依頼を誰かが受けた時に、まったく同じ内容で依頼をもう一度出してる………………、
と、言う設定で管理されてるイベントなんだろうな。
普通ならその出し方でも、システムは『同じ内容を別プレイヤーが受注』なんてトラブルは起こさない。
だから、まぁ、この幼女がわざとトラブルを起こそうとして、その通りにイベントフラグが管理された結果なんだろう。
「…………ふんっ、だったら何だって言うのよ?」
「あ? そりゃ勿論…………」
私はツレの皆に視線を向けて、全員から『任せます』ってアイコンタクトを貰う。
「賠償請求するに決まってるだろ。ギルドに言ってお前が依頼の二重出しやって無いかを徹底的に確認してもらって、故意に問題を起こしてたなら、この依頼を受注するにあたって発生した私達の--……」
「わっ、わぁぁぁあ!? だ、ダメよダメよ!? そんな事したらお父様にバレちゃうじゃないの!?」
「知るか」
故意に問題が起きるように組まれた依頼によって、少年達の方は凄く無駄な時間を過ごす事になった訳だ。もっと言うと私相手に決闘騒ぎまで経験して、少年達は踏んだり蹴ったりだ。
それをギルドに報告するって形にすれば、否が応でもイベントが動くと思ったんだが…………
「だだだだ、だったら雇うわよ! どっちも雇えば良いんでしょ!?」
「同じ条件でだぞ? そっちが勝手に二回分の依頼にしたんだから、私達を一個分の依頼に纏めて報酬下げるなんて事は…………」
「分かってるわよ! 出せば良いんでしょ出せば!」
ふっ、これがグッドコミュニケーションを超えたパーフェクトコミュニケーションだろ。
ヒナが受けた依頼に少年達が合流する形になると、単純に報酬を山分けにするメンバーが増えるんだからコッチは損する。
だからダブルブッキングの責任を突いて、ヒナが受けた依頼と少年達が受けた依頼を別枠で処理して貰うように話しを付けたわけだ。
「すげぇ、一瞬で報酬額二倍にしちゃったよ……」
「ぱねぇ……」
「それな」
そう、単純計算で依頼書二枚分なんだから、報酬二倍って事だ。いぇい!
まぁ、報酬の話しはあくまでオマケだろ。多分、両パーティーでクエストに参加する事で、更に何かしらのイベントが起こるフラグになると思うんだが…………
アレルギー持ちのケモナーは、電脳世界で無双する! ももるる。【樹法の勇者は煽り厨。】書籍化 @momoruru
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