お笑い/コメディ
卯月白華
呟き その2
人を笑わせるのは難しい。
私にはそう感じる。
コメディも敷居が高い。
何故だろうかと思い返している時、ふと考えたのだ。
もし、私が誰かに笑って欲しいと思うのならば、どんな笑いを求めるだろうかと。
心から思わず笑みを浮かべてしまうようなものが良いと思う。
例えば、知らず心のままの優しい綻ぶ笑顔になってくれたなら、私は嬉しい。
ほっこりと心が温かくなる笑いが好きだ。
冷えた心をぽかぽかにするホッカイロ。
こういうのが大好きだ。
誰かを貶す歪んだ笑い。
誰かを馬鹿にする為の見下した笑い。
歪で気持ちが悪い笑顔を浮かべさせるもの。
干乾びて錆びついた笑顔を招くもの。
誰かを否定することで成立する満足な笑み。
そういう笑いの類いは本当に苦手だ。
苦手なものの方が意外と簡単に出てきて苦笑した。
けれど好きな笑いを想像するだけで嫌な感じが色褪せ、ただ幸せな気持ちになるのだから本当に不思議だ。
楽しくて楽しくての大笑い。
腹を抱えての爽快な笑顔。
これらを自らの作品で生み出せるかと己を鑑みれば、容易では無いと簡単に答えが返ってきた。
脳裏に優しい笑みは浮かぶけれど、それを引き出せるかが非常に不安だ。
私は好きで書いているけれど、誰かに作品で晴れやかな笑いを届けられるかと言われたら、存分に眉を顰めるだろう。
多大な曇り空を作っているかもしれない、という思いの方が強い。
青天の無い大雨なのではとも思う。
読了感が見事に綺麗で爽やかな物語。
終わりたくは無いけれど、いざ読めば心を撫でおろす納得の大団円。
理想だ。
私の理想ではあるのだが、実際の私が求めるのは、壊れる程長く続いた暴風雨がようやく過ぎて、台風の終わりくらいの明けるか明けないかの慈雨。
雷鳴轟く暗い澱んだ夜が終わるかどうかな、曙の霧雨。
天変地異で全てが潰えそうだとふと見上げた瞳に映る、黒い雲間から差し込む鮮やかな、目も眩む届かない光。
そんな物語の最後が最高だと思ってしまう。
そんな物語の最後を書きたいと思う。
結果、私の作品は途中も長雨かもしれないと気がついた。
考えてみるに、どうやらなんとか晴れるかもと読んでいて思える、そこまで持って行くのさえ難易度が高い。
温かで澄み切った晴天。
そこから生まれる軽やかな笑い。
悩む。
アイデアが湧かない。
荒天極まったなら幾らでも出てくるのに。
これだから私には、人を笑わせるのが難しいのだ。
お笑い/コメディ 卯月白華 @syoubu
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