第十話 サプライズ

「みなのもの! この方が我が国に来てくださった聖女様である!」


 シルヴィスがユーリーのことを国民に紹介した。

 歓迎の声が響き、集まった国民の目が一斉にユーリーに向いているのがわかる。


「そして、こちらの聖女様はドラゴンの母でもいらっしゃる!」


「ドラゴンだって? とっくの昔に絶滅しているだろ」


「ドラゴンの母ってどういうこと?」


 ドラゴンと聞いて集まった国民がざわつきだした。


「さぁ、聖女様! ドラゴンを呼んでください!」


「はい、殿下。ドラちゃんおいでー!」


 ユーリーがドラゴンを呼ぶと、宮殿の陰に隠れていたドラゴンが顔を出した。


「うわーーーーーード、ドラゴンだ!!」


「に、逃げろ! 襲われるぞ!」


「か、神様だ、神様が現れたんだわ」


 ざわめきの声が一層大きくなった。驚いて逃げ出そうとする者もいる一方、ドラゴンを見て神様だと言う人が多くいるのはこの国にドラゴンの伝説が根付いているからだろう。


「みなのもの落ち着け! このドラゴンは聖女様の言うことを聞くので安全である!」


 王子のその言葉と、大人しくしているドラゴンの様子を見て人々が少しずつ冷静さを取り戻していた。


「今日は聖女様とドラゴンのお披露目以外にみなのものに報告がある! 私レッフェッロ王国の第一王子シルヴィスは、聖女ユーリー・エイナウディと婚約をする!」


 シルヴィス王子がそう言うと集まった国民は一斉に歓喜の声をあげた。ユーリーはただただ驚いている。


(え、婚約ってなに? そんなこと初耳なんですけど……)


「ユーリーさん、驚いたか?」


 王様がユーリーに話しかけた。


「え、は、はい。わたくし何がなんだか」


「ほほっ、そうだろう。私が黙っていろとみなに言ったのだ。世話係にシルヴィスのことを好きか聞かれただろう? あれは実は私が聞かせたのだ。ユーリーさんがシルヴィスのことを好きだと聞いて急いで今日のことを計画したというわけだ」


「ユーリーさん、驚かせてしまってすまない。父上の話に乗っかることにしたんだ。前の婚約で色々あったユーリーさんだから、今度は大勢の人間に祝福して欲しいと思ったんだ。迷惑だったかな?」


「殿下……。驚きましたけど迷惑だなんてそんな……。わたくし本当に嬉しいです。是非、お願いいたします」


「良かった。あなたのこともモンスターのことも必ず幸せにすると約束しよう」


 こうしてユーリーとシルヴィスは正式に婚約をした。



*****



 レッフェッロ王国の第一王子が聖女と婚約したニュースは隣国にも知れ渡っていた。


 ユーリーが聖女だと知った元婚約者のエアハルトは、一方的に婚約破棄したことを今更責められ、実の父親から勘当された。


 ユーリーの父親は何度もユーリーに和解の手紙を送ったが返事が来ることはなかった。



*****



 レッフェッロ王国ではその後、三百年もの間、ドラゴンの神様が国を守っていた。母が死んだ後もドラゴンは母が愛した国を守ったのであった。

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【完結】モンスターを愛し過ぎた令嬢は婚約破棄された後、スローライフで最強のドラゴンを育てて隣国の王子を救ってしまう 新川ねこ @n_e_ko_

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