第九話 ドラゴンの母

 ユーリーはモンスター研究施設に戻って、聖女とドラゴンに関する書物を読み漁った。


(なるほど、聖女は人知を超えた力を持つ女性で、今までにこの国では何人も存在が確認されているのね。傷を癒せる聖女、予知夢を見る聖女、魔法で山ひとつ消せるほどの力を持つ聖女、祈りで天候を変える聖女、そしてモンスターと意思疎通が出来る聖女か……。王子が言うように、わたしはきっと聖女なのかもしれない)


 ユーリーは自分が聖女だということを受け入れ始めていた。


(王様と結婚した聖女もたくさんいるのね。だから王様もあんな冗談を……。ということはシルヴィス王子も聖女の血をひいているということになるのよね?)


 ユーリーは王様が言っていた冗談を思い出していた。


(ドラゴンに関する書物はとても面白いわね。わたしの国の伝説ではドラゴンは怖い存在だったのに、昔この地にあった国ではドラゴンを神として祀っていたのね。ドラゴンの母となる人間の前に卵は姿を現すと書かれているけど、わたしはどちらかというと卵を見つけただけなのよね……。ドラゴンのいる土地はモンスターが現れないと書かれているけど森にモンスターはいたし少し事実と違うことも書かれているのね)


 ユーリーはドラゴンのもとに行き、話しかけた。


「ドラちゃんはわたしを母として選んでくれたの? それなら嬉しいな」


 ドラゴンはユーリーのほっぺたを舐めた。


「そうだよって言ってくれているの? 嬉しいなぁ。それならわたし長生きしないとだね! ドラゴンの寿命ってきっと長いから」


 スライムとアンガーウルフもユーリーのもとにすり寄ってきた。


「みんなもお母さんだと思ってくれてるの? ふふっ、嬉しいなぁ。みんな大好きだよ」


 そうしてユーリーたちは異国の地で身を寄せ合って眠りについた。



*****



 ユーリーたちがレッフェッロ王国に来てから半年が過ぎていた。


「ドラちゃん、いよいよこれから国民のみんなにお披露目だよ! 緊張しちゃうね。良い子にしないとだよ」


 ユーリーはそう言ってドラゴンに優しく触れた。


「ユーリーさん、今日はユーリーさんのことも聖女として紹介しますからね」


 王子としての正装をしているシルヴィスがユーリーに話しかけた。


 ふたりはこの半年でさらに仲良くなっていた。


「それとひとつ、サプライズがあるので楽しみにしていてください」


「サプライズ? わかりました。楽しみにしています!」


 王宮の広間には何千人もの国民が集まっていた。

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