第八話 王様とお嫁さん候補

 一行はレッフェッロ王国へ到着した。


「さぁ、施設に到着しました! 檻の中で窮屈ではなかったですか?」


「いいえ、むしろ初めての経験なので楽しかったですよ。道行く人々がわたくしたちを驚きの目で見てきていましたもの」


「ははっ、ユーリーさんらしいですね。それならば良かったです。ドラゴンたちは施設に預けて、ユーリーさんには父上、王に紹介したいと思っています」


「わかりました。少し緊張してしまいますね」


「父上は私以上に話しやすいと思いますよ。王の威厳など気にせず、街に入り浸ったり、平民の子供にもらった食べ物を毒見もせずに食べるような人ですからね。困った人です。私はそんな父上を尊敬していますが」


「そうなのですね。わたくしの故郷の王とはまったく違います。権力の象徴のような王でした。この国に入ってからみんなが笑顔なのはそんな王が治めているからなのですね」



*****



「父上、こちらが森で私の命を救ってくださった聖女様です」


「お初にお目にかかります、陛下。ユーリー・エイナウディともうします」


「おお、キミがシルヴィスのお嫁さん候補か! 息子を救ってくれて感謝する!」


(え、え、え、お嫁さん候補!?)


 ユーリーは驚いた顔をしてシルヴィスの顔を見た。


「父上!! そんなこと一言も言ってないではありませんか!」


「そうか? お前が紹介したい女性がいると言っていたから私はてっきり……。ずっと聖女様の話ばかりしておったしな。しかし、『とても綺麗な女性』と言っていたがまったく偽りはないな。確かに綺麗だ」


「それは父上が『聖女様はどんな顔だった?』としつこく聞いてくるからしょうがなく答えただけでしょう! わざわざ言わないでください!」


 シルヴィスが取り乱している様子をみてユーリーは思わず笑ってしまった。


「ユーリーさん、いきなり失礼したね。明日私も施設に行くので是非ドラゴンを見せてほしい。歓迎のパーティーは明日の夜なので今日はもうゆっくりしてくれたまえ」


「承知いたしました」



*****



「すみません、父上があんなことを……」


「いいえ、大丈夫です! 気さくな王様で驚きました」


「普段は客人に対してあそこまでくだけた態度はとっていないのですが、きっとユーリーさんが緊張していると思ってのことでしょう。許してください」


「殿下と一緒でお優しい方なのですね。素敵な王様です」


「ありがとうございます。モンスター研究施設に寝泊りすると言っていたのでベッドと世話係を用意させました。聖女やドラゴンに関する書物もすべて運んであります。書物に書かれていることをまとめさせた物も用意してあるのでそちらだけでも目を通してみてください」


「わざわざありがとうございます」


 ユーリーはドラゴンたちの待つ施設へと戻った。


 気さくな王と優しい王子と話して、自然と笑顔になる一日だった。

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