第七話 再会と王国への出発
三か月が経ち、王子がユーリーたちを迎えに再び森へとやってきた。
「ユーリーさん、お久しぶりです。お待たせしてしまい申し訳ございません」
「お久しぶりです。殿下、わざわざお迎えに来ていただきましこと、感謝いたします」
(今日のシルヴィス王子は以前の商人のような服装ではなく、王子様らしい服装をしているのね。前回の旅はお忍びだったのかしら。それにしてもやっぱりさすが王子様だけあって絵になる方ね)
「ははっ、そんな堅苦しくしないでください。ここはまだ私の国でもないですし、気軽に話しましょう。言われた通りに移動出来る大きさの中で、国で一番大きい檻を用意しました。しかし、本当に良いのですか? 私は国賓レベルでのお招きをしたかったのですが、まさかユーリーさんを檻に入れるなんて」
「いいんですよ。絶対に暴れないとわたくしが言っても、ドラゴンやアンガーウルフはきっとみなさん怖いでしょう。でもこの子たちだけ檻に入れるのも可愛そうなのでわたくしも檻に入ればすべて解決です」
「ご配慮いただいて感謝しますが……やはり申し訳ないですね」
「そのかわりモンスターを研究している施設内では自由なんですよね?」
「はい、魔法で結界を張っているのでかなりの範囲を自由に移動できますよ。お約束いたします」
「それなら良かったです。入国する時だけの我慢ならまったく問題ないですから」
そういってユーリーは優しい笑顔を見せた。
「わかりました。では向かいましょう! それにしてもドラゴンまた大きくなりましたね」
「そうですね。この三か月で体の大きさは倍くらいになりましたし、火を噴けるようになって飛べる距離が伸びました。今はわたくしの言葉を完全に理解していますよ」
「火を!? 施設内は防火対応はしていないんですよね……」
「大丈夫ですよ! 駄目だと言っていることはしない子なので安心してください」
「そうですか。それならば安心ですね」
シルヴィスはにこやかにそう言葉を返した。
こうして王子とユーリーたちは隣国であるレッフェッロ王国へ向かった。
旅の道中、ユーリーは自分の身に起きた婚約破棄について王子に話した。
「それで婚約破棄されて家族からも勘当されたのですね。なるほど、それは災難でしたね。私はモンスターだとしても命を大切にするユーリーさんの考えは素晴らしいと思います」
「そんな立派なものじゃないんです。意思の疎通が出来る特定のモンスターだけ特に愛着が湧いてしまって守りたくなってしまっただけで、実はすべてのモンスターを好きなわけではないんです。世の中には危険なモンスターもいることは理解していますし、考えていることがわからないモンスターは正直わたくしも怖いです」
「そうなのですね。てっきり聖女様という存在はすべてのモンスターを愛しているのかと思いました」
「わたくしが聖女かはわかりませんけど……幻滅しましたか?」
「いいえ、好き嫌いがあるのは当たり前のことですよ。むしろそれを隠さずに言うあなたに好感がもてました」
レッフェッロ王国へ向かう道中、ふたりは色々な話をし、お互いの考えを知った。そうしてふたりは無意識のうちに次第に惹かれあっていった。
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