名誉ある戦死

ひなみ

「邪魔するぜ!」 『邪魔をするなら立ち去れい』 「おうよ!」

『フン、来たか勇者よ……ここがお前の酒場となろう!』

「おやじ、ミルクをくれ。ホットでな」

「「……?」」

「違う、そこは墓場だろうが!」

『いいや、ここは魔王城であるぞ……?』

「「……」」


「数々の悪行許すわけにはいかない! 魔王よ、年貢の納め時だ!」

『フフ、来るがよい。そして我の腕の中で快眠するといい!』

「あ、何か優しい……!(トゥンク)」

「「……」」


『だがまずはこやつらの相手をして貰おうか!』

「なんだと!?」

『ゴーガイル! ゴーガイルよ来たれ!』

「「……?」」

「あ、そのガーゴ……ゴーガイルはまだか?」

彼奴きゃつめ、どうしたと言うのだ……』

「あ! ガーゴ、ガーゴ。ゴーガイルまだかなー」

「「……」」


「あれは魔法の詠唱か? まずい、止めなくては……!」

『立ち上れ焔、黒煙を身に包み顕現せよ、冥府より出で来し獣、そのあぎゅと』

「「…………」」

『勇者よ、貴様に魔法などは不要!』

「よし、来い!」

「「……」」


『ではゆくぞ勇者よ……! 身の丈を知れい!』

「160で悪かったな! いや……まだまだこれからだしね!?」

『ホットミルクでもどうだ?』

「「……」」


「ふう、こいつは暖まるぜ!」

『ククク……』

「お前、何か仕込んだのか……?」

『甘いな、甘いぞ勇者よ!』

「あっ、ほんのり甘……? ハチミツだこれー!」

「「……」」


『ククク……』

「なんだ、何がおかしい!」

『クッキーはどうだ?』

「いただこう!」

「「……」」


「遊びはここまでだ! たあっ!」

『ほう、やるではないか』

「お前こそな!」

『ふん、貴様こそ。さすが勇者の名は伊達ではないと言う事か』

「いやいや、魔王の方が圧倒的にすごいですぅー!」

謙遜けんそんするでない。よくぞここまでの力を。天晴れだ大したものだ!』

「「アハハ、アハハハ……」」


***


「姐さん。あのアホども、まとめて焼いてしまいますか?」

「そうね。彼は名誉ある戦死を遂げたと報告しましょう」

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名誉ある戦死 ひなみ @hinami_yut

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