第2話 時間の流れどうなってんの?「ん゛ー、ん゛ー。」

「ちょ、静かにしろ。まだそこ、タイトルだから。」

結人は隆弘の口をふさいでいた、手をはずす。

「はぁー。何すんだよ?急に。」

「しょうがないだろ。お前がしゃべってると、話が終わんないんだよ。」

「それ、それだよ。さっきから訳わからんことばっか言ってよ。話が終わるってなんだよ?次回予告ってなんだよ?タイトルってなんだよ?お前、なんか隠してるだろ。」

「別に隠してるわけじゃねーよ。俺も最近知ったことだ。ここは、小説の中らしい。」

「ん?ん?ん?小説?ん?ここが?」

「あぁ、そうらしい。」

「小説って、あれだろ?字がいっぱいの本。」

「アホみたいな解釈だけど、間違ってはいない。」

「えっと、ここがそれの中ってことでOK?」

「うん。」

「俺も、お前も。この公園も。この町も。この空も。全部?」

「お前の言いたいことはわかる。でも、事実は事実だ。ここは、小説の中で、俺たちはその登場人物。」

「まじかよ。」

隆弘は、頭を抱えてうなだれる。

その体は小刻みに震えていた。

無理もない、俺だってこの事実を知ったときは、わけもわから

「面白ぇー。」

急に両手を真上へ突き上

「わくわくするー。俺が小説の登場人物?まじかよ?最高ー。」

忘れてた。そうだ、こいつはこういうやつだった。

心配して損した。

なにも変わっちゃいない。

出会ったあの頃から、なにも。



「いつも何読んでんの?」

教室で小説を読んでいた俺に、こいつはいきなり話しかけてきた。

土井隆弘。いつもチャラチャラして騒いでいる。

俺は、こういう無神経な奴が一番嫌いだ。

今だってそうだ。放課後の教室で小説を読んでいる俺を茶化そうと、無神経にしゃべりかけて

「え?中学ん時の俺じゃん。何この映像?どうなってんの?お前がやって」

「頼む。黙っててくれ。今、回想シーンだから。これについては、後で説明する。」

「悪い悪い。黙るわ。」

「あと、動くなよ。」

「わかってるって。」


少し巻き戻る。

今だってそうだ。放課後の教室で小説を読んでいる俺を茶化そうと、無神経にしゃべりかけてきやがった。

「なあなあ、聞いてる?あ、もしかして、人に言いにくいやつ?それなら、そう言ってくれよ。あれだろ?俺も好きなんだよ。あれ、エロいよ」

「違うわ。なんか勘違いしてるだろ。これは、普通の小説だから。」

しまった。思わず反応してしまった。

「なんだ。普通のやつか。それ、面白い?」

どうせ対して興味もないくせに。

「あぁ、面白いよ。つまんなかったら読んでないからな。で、なんか用か?用がないならどっか行ってくれないか?小説に集中できないんだが。」

「なんか怒ってる?俺、なんかしたか?」

したよ。いろんなことを。

でも、もうそれは関係ない。

わかってんだよ。自分でも。自分が小さい人間だって。なにも出来ない口だけ野郎だって。

だから、ムカつくんだよ。そんな自分が。


「隆弘、そろそろ、行くぞー。」

「あ、悪い。俺、ちょっとパスだわ。」

「はぁ?お前がカラオケ行こうって言ったんだろ?」

「そうなんだけどよ。急に用事思い出してよ。ほんと悪い。今度、おごるからよ。」

「プレミアムドリンクバーな。全員分。」

「普通のじゃダメ?」

「ダメだな。」

「OK。わかった。」

「忘れんなよ。」

「おう。ほんと悪かったな。」

「みんな、行こうぜ。」


「なあ、俺、なんかした?」

「いや、帰れよ。用事あるんだろ?」

「ん?あー、あるよ、用事。お前との話。」

「はぁ?」



あのとき、無神経にしゃべりかけてきたこいつと、まさかここまで長い付き合いになるとはな。

「もういいぞ。」

「今の何?中学ん時の俺らだったよな。あの教室も懐かしいなー。」

「そうだよ。中学ん時の回想だからな。」

「過去に戻れんの?小説って何でもありだな。」

「戻れるわけじゃない。あくまで、回想

。見るだけだ。」

「いつでもいいのか?」

「いつでもじゃない。俺が思い出せる範囲限定だ。」

「じゃあさ、中3の体育祭はいけるか?」

「中3の体育祭?あぁー、なんとなくなら思い出せる。」

「ちょっと、頼むわ。」


次回

『中3の体育 』


「硬っ、苦っ、まずっ。なんだこれ?」

隆弘は、祭を食べた。

祭を食べた?

「何をやっとんじゃ?お前は?」

「ん?いや、この浮いてる字、食えんじゃないかなーって。」

「食えんじゃないかなー?っじゃないわ。食えるわけないだろ。それ、次回予告だぞ。ってか、食うなよ。」

「だな。だめだこれ。硬くて苦い。とても食えたもんじゃない。」

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小説が出来るまで~登場人物は今日も必死~ 菅田山鳩 @yamabato-suda

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