小説が出来るまで~登場人物は今日も必死~

菅田山鳩

第1話 中の人

「髪の毛ってさ、なんで濡れんのかね。」

「ん?どうした急に。」

土曜日の公園。

ベンチに座る二人の高校

「ちょ、ちょ、え?誰としゃべってんの?」

「今、説明中だから、しゃべるな。お前との会話はこの後だから。」

ベンチに座る二人の

「え?説明って、何を?今、なんかやってんの?」

「チッ。だから、今、説明してんだろ。お前がしゃべると地の文が途切れるだろ。また、最初からだよ。」

土曜日の

「なー、地の文って何?」

「おい、しゃべんなって言ったよな。話が進

まないんだよ。無駄に文字数使うな。」

土曜日の公園。

ベンチに

「ごめん。」

「おーい、バカか。しゃべんなよ。わかんないのか?口を開くな。」

土曜日の公園。

ベンチに座る二人の高校生。

はぁー。やっと、できた。

あ、やべっ、間違えた。

「お前のせいで、間違えたじゃねぇか。」

「もう、しゃべって良いの?」

「あぁ、会話のシーンに入ったからな。」

「悪ぃ、あのー、よくわかんないんだけどさ、なんか、やってる?」

「なんかって?」

「ほら、その、ドラッグ的な。」

「バカ、ド◯ッグとか言うなよ。その辺、結構シビアなんだよ。」

「え?今の何?どうやったの?ピーってやつ。」

「不適切な言葉だったから、入れただけだよ。発言には気を付けてくれ。」

「もう一回やってくんない?」

「いや、だめだ。そんなに何回も入れるものでもないんだよ。」

やっぱりこいつはバカだ。

「こいつって、俺のことか?なんで、変な方見て、しゃべってんの。」

「おい、地の文としゃべんなよ。」

「お、こっち向いた。さっきからさ、地の文って何?」

「地の文だよ。会話以外の文のこと。常識だろ。」

「会話以外の文?文って何?やっぱ、お前、ド◯ッグ、お、ピーって鳴った。ド◯ッグ、おーすげー。ド◯ッグ、ド◯ッグ、ド◯ッグ。」

「なーにをやってる?BANされたらどうすんだよ。」

「バン?なにそれ?」

「もういいよ。今日はこれくらいにしよう。」

何気ない一日。

人生には、こんな日が大切だっ

「もう帰んの?まだ、何もしてないけど。」

「だーかーら、しゃべんな。今、締めてるところだろ。」

「なるほどね。なんとなくわかってきたぞ。お前が変な方見てしゃべってるときは、黙れば良いんだろ?」

「んー、なんか違う気もするが、とりあえずそれで良いよ。」

何気ない

隆弘は、ポケットからスマホを取り出す。

「動くなー。」

「あ、こっち向いた。ってことはしゃべって良いんだよな?」

「なんで動くんだよ?」

「ん?動くのもだめなのか?それは、聞いてないぞ。」

「わかるだろ。動きも地の文なんだから、かぶるだろ。」

「そうなの?じゃあこれは?」

隆弘は右手を無作為に動かし始めた。

その手を、結人が無理やり止める。

「やめろ。説明しづらい動作は伝わらないだろ。」

「はぁはーん。なんかわかってきたぞ。ってことはこうすると、ド◯ッグ、ド◯ッグ、ド◯ッグ。」

ベンチから立ち上がった隆弘は、謎のステップを踏みながら、両手を無作為に素早く動かした。

「はいはい、終わり終わり。」


終わり。


次回

『時間の流れどうなってんの?』

お楽し


「なにこれ?なんか字、出てきた。どうなってんの?字、浮いてんだけど。すげー。」

「しゃべんなー。次回予告中にしゃべるやついねーから。あ、って俺もか。あ、すみません。次回も見てください。」

「帰り、コンビニ寄っていい?」

「次回まで我慢しろ。」

「次回っていつ?今、腹へってんだけど。」

「それは知らん。でも、この話が終われば腹も減らなくなるから。」

「どゆこと?」

「あーもう。説明がムズい。体験すればわかるから。」

ぐぅー、隆弘の腹が鳴った。

「地の文を増やすな。予告終わってんだよ。」

「今のはしょうがないだろ。」

「まあ、たしかにな。ごめん。ちょっと言いすぎた。」

「わかってくれたならいいけどよ。」

「ってか、ここ、こんなに長くしゃべるとこじゃねーから。」

「なに、ピリピリしてんの?お前、門限とかあ」

結人は隆弘の口をふさいだ。


本当に終わり。

「んー、ん゛ーん゛ー。」

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