大自然最先端科学研究部

風見☆渚

部活会議

天使拓哉(あまつか たくや)は、春から高校生。

そんな未来の期待と不安を胸に、高校の入学式を終わらせた。

と同時に、突然現れた神流崎詩織(かんなざき しおり)の美貌とスタイルに惑わされ怪しい部活へ強制的に入部させられてしまった。

こうして、天使拓哉のあるはずだった平凡な高校生活は即日終了を迎えてしまった。

学校中の生徒はもちろん教諭達からも怪しい目で見られている『大自然最先端科学研究部』の部長である神流崎詩織は、見た目の美しさだけでなく成績優秀スポーツ万能。完璧超人で、しかも生徒会長を完璧に熟している。だから、どんなに怪しい部活であっても彼女が所属している限りこの部活は絶対になくなることはない。

大自然最先端科学研究部の主な活動は、大自然の中に隠された最先端科学を発掘及び研究するというモノ。

しかしその内容は、学校裏の川へ行き小石を見つけては宇宙からの飛来物だと決めつけたり、怪しい壺を自作したりなど意味不明な点が多い。

そんな部活の今後の活動内容を決める会議が、今日も行われている。



「さて!本日の議題だが」

「あの、部長?」

「はい!ミカエル!」

「いや、まずそのあだ名やめてもらえませんか。“天使”と書いて“あまつか”と読むからって、その呼び方は絶対にイヤです。名前の拓哉でお願いします。」

「だって、あなたは大天使ミカエルの生まれ変わり。かもしれないのよ!ミカエルと呼ばれて当然の存在じゃない。」

「どう考えても違うでしょ。まぁもう慣れましたけど。

とにかく、部長。他の部員を待たなくて良いんですか?」

「あぁ、皆は各自の用事を済ませたらすぐ来る。らしいから気にしないでいいわ。」

「らしいって。皆の用事ってなんなんですか?」

「佐藤は日直。木村は委員会。鈴木は、罰として学校中の草むしり。」

「鈴木、あいつ何やらかしたんだ?」

「そしてヤンチャボーイは、近所のお婆さんの家事手伝いよ。」

「山中先輩をヤンチャボーイって、“や”しか合ってないし。

そもそも、近所のお婆さんの家事手伝いって何ですか!?」

「ミカエル、コレも大事な部活動よ。

ヤンチャボーイの近所のお婆さんが作るぼた餅は絶品なの!しかも、ぼた餅は私の命の源よ!お駄賃にいつも貰って来てくれるのだから部活に必須項目な存在なの。わかる?」

「わかる?って、あんたの自己満か!」

「ミカエルはケツの穴の小さい事言うわね。」

「キレイな顔でその言い回しやめてください。」

「とにかく、これからの活動内容を会議するわ。」

「はいはい。よくわかりませんが、どうぞお願いします。」

「先日発掘された太古の遺産だけど、実は保管場所に困っているのよ。」

「あぁ、こないだ自販機の下で見つけた古い小銭ですね。」

「そう!それよ!アレはきっと私達に見つけられる為、あそこでひっそり私達を待っていたんだわ。」

「もし小銭に感情があったら、駄菓子一つ買えませんよ。」

「あれは私が大事に保管してたのだけれど、遺産の中心に穴が開いてるじゃない?」

「あぁ、確かに開いてましたね。」

「そう。その開いている穴に、うっかり紐を通して、うっかりぶるさげてみたら」

「うっかりにも程があるでしょ。」

「そしたら、うちの猫のセバスチャンが気に入ってしまったの。しかも、テレビ台の下の隙間に入れてしまったの。」

「大事さの欠片もねぇな!」

「穴があったら何か入れたくなるのは、必然じゃない?

男の子なら、わかるでしょ?」

「卑猥な表現やめてもらえます!」

「もっか捜索中なのだけれども、もし見つかってもまたセバスチャンに掠め取られるのではないかと心配なの。」

「その紐取ればいいんじゃないですか?」


ガチャッ――

「ぎぃーーーぃーー」


「話は聞かせてもらいました。部長。」

「鈴木、扉の効果音は要らないぞ。草むしり終わるの早かったな。

だが、そのボロぞうきんみたいに汚れきったつなぎから制服に早く着替えたらどうだ?」

「ボロぞうきんではない!ミカエル、よくぞ聞いてくれた!

これは、戦の果ての勲章なのだ!」

「あぁはいはい、面倒くさいからそのままでいいや。」

「ところで部長!その太古の遺産の保管場所ですが、このゴールデンミミックではいかがでしょうか。」

「それ、部室の奥にあった古い金庫を金色に塗っただけだろ?

しかも鍵無いから開けっぱなしだし。」

「そうか、その手があったか!」

「いや、ないよ。」

「部長!このゴーーーーールデンん~ミミックの手にかかれば、セバスチャンからの魔の手から守れるのではないでしょうか!」

「単純に部長の家に置いておかなければ問題ないのでは。

でも、この部室に置いておけば誰も近寄らないし良いんじゃないですか?」

「ミカエルもそう思うか。ならば、鈴木の意見は採用だ!」

「ありがたき幸せ。」

「鈴木、騎士風に片膝ついて何やってるんだ。」

「では、太古の遺産を我が家から再発掘次第、このゴールデンミミックに保管することにしよう。」

「まずはテレビ台の下の掃除からですね。

部長の家だから、他にも如何わしいモノが何か出てきそうですね。」

「失礼な。ミカエル、私の家に大人のおもちゃはないぞ。

ミカエルの期待に応えられなくて申し訳ないな。」

「そんな事思ってないし、俺が変な期待しているみたいな言い方やめもらえます!」


ガチャッ――

「ぎぃーーーぃーー」


「山中先輩、おつかれさまです。てかそれ、毎回皆やるんですか?」

「部長。遅くなった、申し訳ない。

今日はお風呂のカビ取りに手こずってしまい、遅くなってしまいました。」

「そんな事は些細な事だ。それで?ヤンチャボーイ。例の物は?」

「確かに些細だけど。

カビ取りって山中先輩とそのお婆さんとの関係が気になるな。」

「問題ありません、部長。ミッションMUBMGは無事、遂行してきました。」

「山中先輩、MUBMGって何ですか?」

「ミカエルはまだ知らなかったな。

では、特別にヤンチャボーイ自ら教えてやろう!」

「いやべつに。山中先輩、ヤンチャボーイ気に入ってるんですね。」

「MUBMGってのはだな、“マジ美味いぼた餅ゲット”の略だ。」

「しょうーもな!」

「まぁ、ミカエルも一口どうだ?」

「部長がそこまで言うならありがたく。もぐもぐもぐ・・・

お!やばい!コレ、マジで美味い!」

「そうだろそうだろ。俺の活躍あっての戦利品だ!」

「さすがヤンチャボーイ!コレがなくては私は生きていけないのだ。」


今日もグダグダな部活はこうして過ぎていったでした。

目指せ世界平和!

打倒悪の組織!

大自然最先端科学研究部の活動はまだまだ続く・・・



かも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大自然最先端科学研究部 風見☆渚 @kazami_nagisa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ