道程

三十路までの道程

校庭を走り回るのも嫌いじゃなかった

体の小さい二月生まれ

それ以上に図書館で本を読むのが

好きだと思っていた

思おうとしていた

勉強が得意で

得意気で

人が知らないことを知った気になって

親の期待担って

大学まで行かせてもらった

そこにいくらかかるかも知らず


三十路までの道程

到底波瀾万丈と言うほどではない

けれど決して平坦な道のりではない

仕事は辛い

気分は暗い

うらぶれ、たじたじの日々只只

ふらふらと飛び出す夜の池袋

大通りど真ん中の自殺志願者

ホワイト企業勤めの友人を酷く僻んだ

歪んだ心を支えてくれるのは彼女だけだった

休日出勤 16時に終わると言っていた

気づけば3時間待たせた

生徒は待たせず大切な人をいつまでも立たせた

ごめんと言うだけで一緒に歩いてくれた

だからある今

いつも伝えたい感謝


三十路までの道程

肯定される居場所

ずっと立ちたかったマウンド

運動嫌い少年野球じゃずっと八番ライト

または控え

下級生と温めるベンチ

天地ひっくり返す大人になっての草野球

今も思い出す初めて自分が投げて勝った試合

気合いの完投

チームが感動

新たな自分がとうとう誕生


三十路までの道程

想定外の自分を今になって知る

人といることが好きだと教えてくれたのはテレワークになってからのライフ

酒が好きなんじゃなく飲み会が好きなタイプ

ワイプサイズの画面越しの顔じゃ足りない

目の前で話したい

握り始めたマイク

過去は暗い

今も辛い

辿り着いたスラムの舞台

未来のために歌うたい詩を読む


三十路までの道程

童貞は十九で捨て

その相手と付き合って十年をこえ

結婚して五年をこえ

幾夜をこえ

毎晩俺を起こす子どもの声

どこへ行っても家族がいるからがんばれる

人生のどのタイミングの俺に会っても

言ってやりたい天晴れ

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日常詩・人生詩 マサイ嵐 @basashi32

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