心に湯気のたつ「おゆはん」が浮かぶ
- ★★★ Excellent!!!
わたしとあの子とワンコ、2人と1匹がつづる、食卓の情景を描いた作品です。
「おゆはん(お夕飯)」という響きが良いですね。あたたかくてどこか懐かしい。その響きと同様に、読めば心がホッコリします。
魅力のひとつは、ユーモアとリズムのある独特の文体です。
『しっとりしとしと雨が降る。
いぬは窓辺のベッドでぐるり、ベーグルのように丸くなる。すぴょーすぴょーと寝息。』
こんな感じ。
作者の夕雪さんはしっかり料理をされる方なのでしょうね。「豚肉と白菜の重ね蒸し」「たまごとじにゅうめん」など、レシピとしても使えますよ。
おゆはんの詳細な描写の一方で、登場人物のビジュアルがあえて伏せられているのも面白いです。そこは読者がイメージを膨らませながら読んでみてください。