心に湯気のたつ「おゆはん」が浮かぶ

 わたしとあの子とワンコ、2人と1匹がつづる、食卓の情景を描いた作品です。

 「おゆはん(お夕飯)」という響きが良いですね。あたたかくてどこか懐かしい。その響きと同様に、読めば心がホッコリします。

 魅力のひとつは、ユーモアとリズムのある独特の文体です。

『しっとりしとしと雨が降る。
 いぬは窓辺のベッドでぐるり、ベーグルのように丸くなる。すぴょーすぴょーと寝息。』

 こんな感じ。

 作者の夕雪さんはしっかり料理をされる方なのでしょうね。「豚肉と白菜の重ね蒸し」「たまごとじにゅうめん」など、レシピとしても使えますよ。

 おゆはんの詳細な描写の一方で、登場人物のビジュアルがあえて伏せられているのも面白いです。そこは読者がイメージを膨らませながら読んでみてください。

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