再生の春に

再生の春に

再び生まれる

温もった土の下からにょきっと顔を出す草

かつてひび割れた地を労るように

前を向いて歩く人を励ますように

誰かが待ってる誰かの目で見守ってくれたら

―なんて私の思い上がりかもしれない

それでも

優しい緑は確かに命の色をしている

再び生きたいと顔を上げる我々の

再び生まれる

広く遠い海の彼方からゆるりと吹く風

光る波を撫であやすように

人の心を解きほぐすように

誰かが待ってる誰かの声を届けてくれたら

―なんて私のわがままかもしれない

それでも

優しい風は確かに背中を押してくれる

再び生きようと走り出す我々の

再び生まれる

硬い蕾を押しのけてふうわりと色づく花

天国の彼や彼女の上に降り注ぐように

無から立ち上がる人の目を彩るように

誰かを待ってる誰かの想いを叶えてくれたら

―なんて私の傲慢なのかもしれない

それでも

優しい花弁は確かに笑顔を思わせる

再び生きるべく手を取り合う我々の

再び生まれる

その身にいっぱいの愛を受けて

未来にも過去にも頓着しないで

瞼の奥の双眸をきらきらさせて

新しい世界にぴょこんと生まれ出る命

愛を注ぐために

愛されるために

愛し合うために

再び生まれ

再び生きる

誰かを待ってた誰かの生まれ変わりかな

誰かを待ってた誰かにまた会えるのかな

―なんて私の幻想でしかないけれど

それでも

一つの命として再び生まれ

一つの命として再び生きる

輝かしく愛おしい存在達が

春めくこの日に祝福されますように

春めくこの日を見つめてくれますように

だから我々も一歩また一歩前に進もう

今を生きる我々の心も

再び生まれ

再び生きる

そうやって負けずにいられるように