読了後、「僕は今まで、11年間、何を見てきたのだろうか」と考えました。
ニュースで見た映像や、ドキュメンタリーや、再現ドラマ……。それを見る度、確かに、恐怖や悲しみがこみ上げてくることはありました。しかし、それはどこか"よそよそしさ"を含んだ感情だったのです。
毎年来る「あの日」。
その日だけ、心を痛める。そして翌日、その日が過ぎたことに、どこか心の隅でホッとして、何事も無かったかのように生活を始める……。
あの日を、年表に一行で収めて『訓戒』とするかのような……そんな気持ちが僕の心の中にあったことを、この小説は優しく、されど厳しく、指摘してくれました。
僕は、正直、「あの日」の話が辛くて苦手なのですが、この物語だけは、何だかスッと心に染み込んだような気がします。
最後に、作者様へ。
この話で文章に触れるのは場違いであるかとは思いますが、作者様の繊細な描写と情熱があってこそ、こんなにも心の芯へと響く物語となったのだと思います。
書いてくださり、ありがとうございました。