第2話

「知らない天井」

辺りを見渡せば6畳ほどの部屋にベッドや机などが置かれ、蝋燭が木でできた部屋を照らしている、

意外にも魔王の寝床は清潔感が溢れているようだ

「やっと起きたか」

と背後から、聞こえた声に

夢じゃなかったか〜と自身の運命を呪ったところで

「そのまま、俺の方を向かないで答えろ」

「向かないででもなにも動けもしないんだけど」

そうマリーは今、部屋の中央にある柱に腕を縛り付けられているのだ

「じぁ、話を進めるぞ」

とお構いなしに話始める

「まずは自己紹介だな、俺はジン、あんたは?」

「私はマリー」

顔が見えないからか案外普通に喋れる

「で、あんたは俺の演技がすぐ分かったのはなんでだ?」

「私は人の心を見れるの」

嘘は言わないが全ては言わない

相手が自分の心を読めると過大に解釈させるという狙いは

「成る程な嘘は言ってない、けど全てそれが全てじゃないな」

思考が読まれたと錯覚するほど完璧に言い当てらる

「なんで?」

当然の疑問を投げかける

マリーは腐っても王女である、気づかれるようなヘマはしないと思っていたが

「逆になんで、初対面のヤツに全部話そうとすんの?」

そんなことを然もありなんとことえた男に

そりゃそうだと内心で笑って肯定した

「じゃあ、第二王女」

「へ?」

突然自分の正体を当てられ変な声が出てしまう

「別にそんな、難しいことじゃないこの国で心を読める、いや相手の心を色として認識できる少女なんて一人しかいない」

「なんでそんなことまで、ていうかさっきの質問の意味は?えっ、貴族しか知らないことをなんで?」

あまりの情報量にパンクしそうになりながらでも

「あなた何者?」

と絞り出した質問に

「ただの一般人」

と、そうまともに答えていないだろう口調で言った

「むっ、じゃなんで私の『魔眼』のことまで知ってるのか教えてよ!」

少々、怒り気味に言ったその質問に

「亡霊から教えてもらったんだ」

とまた真面目に答える気がないのだろうと思っていたら

「そんなことより、第二王女様がなんでこんなところまで来たんだ?」

と一方的に話を変えられる

「もう嫌になったのよ」

そう不貞腐れながら答える

「ほ〜うお城での生活がか?」

「えぇ、部屋からはほとんど出れないし、家族は顔すら合わせてくれない、使用人たちは皆、奇異の目を向けてくる、何より貴族と会う時なんて最悪よ

みんな善人ですみたいな顔してるくせして心の中は

嫉妬や嫌悪や怒りでごちゃついてて気持ちが悪い、

・・・本当にね、気持ちが悪いの。」

何故か次から次へと出てくる言葉

きっと誰かにずっと聞いて欲しかったのだろう思い

「でもね・・・」

ついには泣きながら

「でもね・・下を向いたらもっと気持ち悪くなるの」

自身の心を眺め

「私のはね、その大っ嫌いな貴族とか家族とかより

ずっと汚いの

そんな自分が何よりも気持ち悪くて気持ち悪くて気持ち悪くて・・・・気持ち悪くて」

初めて口にした本音、隠して見えないようにしてた気持ち

「そんな自分を嫌いになっちゃう場所なんて

耐えれない、だから逃げようと・・・・」

気づかないようにしていた気持ち

気づいてしまったらそれこそ本当に自分のことを

嫌いになってしまうから

「ねぇ、なんか言ってよ」

もう吹っ切れたのか、怖がっていた存在に怒りを

ぶつけた


「なにか言いなさいよ!!!」

「・・・・」

八つ当たりなのは分かってても

それでも抑えられない気持ちを他人にぶつける自分が本当に嫌い。

「実に深刻そうに話すからどうしたかと思ったら

ただの自己嫌悪か、ただ周りの環境が嫌になって

逃げ出したんだろ、子どものイヤイヤ期か」

また抑えの効かない感情が心から湧き出てくる

「お前になにがっ・・」

図星をつかれた負け犬の遠吠えは

「だが、それでいい、いや逆にそうでなくてはおかしいだろう」

「は?」

そんな言葉で遮られた

「てかお前もなに自分の気持ちを否定しようとしてんの?、いいんだよそれで嫌なら逃げろ嫌いな奴なら殺していいんだよ。」

「いや別に私はそこまでは・・」

そんな暴論に自分は違う、そこまでじゃないと言う前に


「ようは、好きなように生きていいんだよ!!!」


そう最後に捲し立てた後

マリーの正面に立ち腕の拘束は解いた

開放されたマリーは口を開いた


「そんなことしても誰も認めてくれない」


「認めてもらう必要なんかねぇだろ」


「世間はそんな私を糾弾するわ」


「それがどうかしたのか」


「私は幸せになりたい」


「当然だな」


「城なんかにいたくない」


「そうか、じゃあどうする?」

顔は見えないが声色からニヤついてるだろう

ムカつくけどそれ以上にワクワクして


最初はあれだけ怖かったのに今では心地よくすらある、それはコイツにすべて吐き出したからだろうか

それとも自分以上のクズに会ったのが初めてだからか。


「一緒に逃亡しない?」


「いいぜ、面白そうだし」

「じゃあ、エスコートしてもらおうかしら」

「いきなり図々しくなったな」

「もう自分に嘘をつくのはやめたの」

「そうかい、だったらこういうのでいいかい・・

さぁ、お姫様お掴まりください・・なんて」


私はこの日この黒い手をとって全てから逃げ出した

そして一つやりたいことが出来たのだ

この黒い男、ジンの素顔を見てみたいなぁ〜と

だから私と一緒に逃げてそれで少しでも改心させるのそしたらこの黒いモヤも少しは減ってくれるのかな〜、なんて思ったりして。


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こんな世界もクズと歩けば怖くない kamyu @Masa0194

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