ガチャ引き名人に降臨したSSR少女

月城 友麻 (deep child)

SSR少女、降臨

 キタ――――!

 教室で隼人はやとの友人の男子高校生はガッツポーズで絶叫した。

 その握りしめたスマホの中ではソシャゲのSSRキャラがキラキラと光輝いている。


「さすが隼人! ずっとこれ欲しかったんだよぉ……」

 もはや涙目になった友人はそう言ってオーバーに隼人をハグした。

「おいおい、そういうのいいから、早く三千円!」

「お、おぉ、そうだった。このキャラの出現確率は0.01%。三千円なら安いもんだぜ!」

 友人はそう言って財布から千円札を三枚取り出すと隼人に渡した。

「毎度あり~。帰りにファミレスでパフェ食べちゃお」

 ウキウキの隼人だったが、そこに隣のクラスの女子がおずおずと近寄ってきて言った。

「ねぇ、隼人くん! 私のも……、やってくれないかな……」

 おかっぱ頭の彼女が恥ずかしそうに差し出すスマホには【召喚】のボタンがキラキラと光輝いている。

「え? あ、まぁ……いいけど……。引けたら三千円……だよ?」

 隼人は親しくもない女子からお金を取ることに引け目を感じて答える。

「引けたらでいいんでしょ? それなら三千円なんて惜しくないわ!」

 少女は決意のこもった声で答える。その目は恐ろしいくらいに血走っている。

 なぜ、ゲームのキャラにそんなに入れ込むのか隼人には全く訳が分からなかったが、キャラを引くだけでお金がもらえるなんて隼人にとっては実に美味しいディールだった。

 隼人はなぜか子供のころから運気を読むことに長けており、こういうクジでは十中八九辺りを引けるのだった。第六感というのだろうか、『今引くと当たる』という瞬間がなぜかわかってしまうのだ。

 隼人は少女のスマホを受け取ると、指先をボタンの上に置き、目をつぶってその瞬間を待つ。

 少女が両手を組みながらそんな隼人をジッと見つめ、拝んでいる。

 隼人の心の底で何かがカチッと音を立て、稲妻のようなイメージが脳髄を貫く。


 ハッ!

 隼人は素早くボタンを押し、美しいアニメーションが動き始める。キラキラと輝くエフェクトの中から現れたのは金色に輝くカード。

「きたっ、きたっ!」

 少女はそのカードの色に興奮を隠せずに叫ぶ。

 そして、カードはクルクルと回り、光り輝きながら降りてくる。


 やった――――!

 少女の絶叫が教室中に響き渡り、彼女は隼人の手をぎゅっと握りしめた。

「お、おい、そんな泣くなよ……」

 感無量の彼女は涙をポロポロとこぼしながら、

「これ、欲しかったのよぉ……」

 と言うと、うつむいて小刻みに震えた。


      ◇


 その晩、隼人は自室で今日の稼ぎ、千円札三十枚を眺めながら大きく息をついた。

 自分のこの力は他に聞いたことがない。きっとすごい力なのだろうが、こんな使い方をしていていいのか不安になってきたのだ。

 もしかして回数制限があるとしたら三千円なんかで大盤振る舞いしちゃっていたら大損である。

 この力で一番金儲けをするとしたら……ギャンブルだろう。隼人はネットを調べ、オンラインカジノに入ってみた。

 そこにはいろんなタイプのカジノゲームがどぎついカラーできらびやかなエフェクトを放ちながら並んでいる。

「どれがいいのかな? ソシャゲみたいな押すだけの奴がいいな……」

 そういいながらスロットを選ぶと入会特典の三万円を全賭けしてスタートボタンを押した。最高賞金は三千万円、隼人は心臓がドクドクと高鳴るのを感じる。

 くるくると回るスロット。隼人は目を閉じて当たるタイミングを待ってみる。


 しかし、いつまで経ってもその瞬間は訪れない。

「うーん、これはダメなのかな……」

 そうつぶやいた時だった、今までに感じたこともないような衝撃が隼人を貫く。

 あまりに強烈なイメージで隼人は一瞬ためらう。こんな激烈なイメージを実体化していいのだろうか?

 しかし、ためらっていたら逃げてしまう。幸運の女神には前髪しかないのだ。

「ええい! 行けー!」

 隼人は覚悟を決め、力を込めてボタンをタップした。


 直後、スマホが激しい閃光に包まれる。

「うわぁ!」

 あまりのことに思わず手で目を覆う隼人。

 これはバグとか故障のレベルではない、とんでもない超常現象が起こってしまった。

 思わず椅子から転げ落ちる隼人。

 その時、若い女性の声が響いた。


「みーつけた! きゃははは!」

 隼人が驚いて目を開けると、スマホから青い髪の女の子がニョキっと顔を出し、笑っているのだ。

 ひ、ひぃ!

 思わずスマホを放り投げる隼人。

 すると少女はスマホから抜け出して、空中にふわりと浮かんだ。

 近未来的なボディースーツに身を包んだ彼女は、全身に淡い水色の光を纏い、ニヤリと笑いながら、

「デスティ・ハッカー見つけたぞぉ!」

 と、言って、指先を隼人に向けた。


 隼人はあまりのことに混乱し、ただ、その可愛い美少女を呆然と見つめていた。

 自分の力が引き当ててしまったとんでもないSSR少女、それは天使か悪魔かわからないが、隼人の人生が大きく変わる瞬間を迎えた事だけは確かだった。

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ガチャ引き名人に降臨したSSR少女 月城 友麻 (deep child) @DeepChild

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