花言葉

lager

お笑い/コメディ

「あれ。店長。ミルク変えたんですか」

「うん。今月からこっち仕入れるから、前のから使ってね」


 私が帳簿と格闘していると、補充をしていたバイトの女の子がそれに気づいた。


「1月7日、セリ、清廉で高潔……? なんです、これ。占い?」

「花言葉だよ。誕生日の」

「え、これ全部あるんですか?」


 本社の意向で、今月からウチのコーヒーショップではそのミルクポーションを使うことになった。

 正直、面倒な予感しかしない。客から「私の誕生日のを探してくれ」とか言われたらどうするのだ。


 そして、早速――。


「すごい! 私のどれだろう!」

「え、なになに」

「へえ、面白そう。俺のは?」


 ほら見ろ、バイトの子たちが全員釘付けじゃないか。


「ゲッカビジン、儚い恋。え〜! 儚いの〜」

「ナンテン、良い家庭。よし」

「よしじゃねえよ。相手もいないのに。えーっと……え゛。トリカブト?」


 あああ、業務が滞ってますよ〜。


「店長は?」

「私はいいよ」

「え〜。探しましょうよ。いつでしたっけ?」

「……6月14日」


 そりゃ私だって気になるよ!

 だから見ないようにしてたのに!

 仕方ない。

 ちゃっちゃと探して早く仕事に戻ろう。

 しかし、いざ探すとなるのなかなか見つからず、探し始めると止まらない。

 もう全員意地になって袋を開封し、片っ端から検めていくこと、20分。


「あ! ありましたよ!」

「やった! え〜っと……6月14日、シモツケ、意味は……」



『無益』



 全員、爆笑。


 はいはい。仕事しましょ。

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