第3話

 地方都市


 魔の森から少し離れた街に到着。俺らのクランの街はすぐ隣に魔の森があるから危なっかしい所だが、このぐらい離れてると安心。


 今回は人間の方の弟連れじゃなくて、竜の舎弟と竜の弟を連れて来た。


 竜騎士団だと寝てても食い物が出て来るが、クランだとセルフで狩りをしてくる必要があって、結構自由で檻も無いし魔の森でも巣を作って暮らせる。


 大きくなりすぎて親父の家を出る時、どっちを選ぶか自分で決められるようにはしてあるが、子象サイズなのに魔の森で独り立ちするのは難しい。


 今日は流石に都市の中まで火竜で乗り込むとすぐにバレるから、川の向こうの森に降りて徒歩、こいつらは空から探らせる。


『兄貴、この街で子供攫われてんのかい?』


『おうよ、修道士会が悪さして、何か実験してるらしい。おっさんとかババアでは魔獣との合体なんか受け付けないらしくてな、何でも適応する若いクソガキ攫ってやってるそうだ』


『すぐ踏み込みますかい?』


『調査部の奴らが一回見付けたからな、もう荷物畳んで逃げただろう、オマエラは上から探ってくれ』


『へいっ』



 弟と舎弟が飛んだら徒歩で都市に入る、ちょっと距離があったから縮地とかも使ったが、空飛ばないで来たからこれでも普通の冒険者として入場。


 さて大人しく入るか? それとも大騒動起こして目立つか? まあいつものノルマでルーティーン達成してから行こうか。


「お~い、スラムの連中、飯の時間だっ」


 熊とか狼の魔物肉を置いて行き小銭も撒く。通行人や金持ちの馬車に石投げてたクソガキ共も、目の色変えて小銭拾って、ナイフで魔物の足とか切って持って帰ってる。


「兄ちゃん、何でこんな事するんだっ?」


「ん~? 所謂一つの修行? 功徳を積んで魔獣を狩った業を落とす、みたいな?」



 こいつらは攫われる立場の子供だから、悪の組織の使い走りでは無さそうだ、仲間の所に戻って何で食い物と小銭撒いてるか説明しに行った。


「食いもんだっ、この足俺のだっ」


 ハゲタカとかピラニアに襲われたみたいに、見てる間に肉が剥ぎ取られて行って、討伐証明の耳から無くなって、ハラワタとか毛皮も取られて、野犬が骨外して行って骨髄まで食ってる。


 今日は奮発してウサギとか鹿とか猪とか、食っても美味いのも置いてやり、塩の袋とか香草も野菜も置いて、人が集まった所でエリアヒール。


「せ、聖人様だよっ、徳の高い聖人様だようっ」


 いつも通り目の色変えたクソガキが、病気持ちの家族呼びに行く。


 最初はゆっくり移動して、連れて来られたオバハンとかも治して、性病で鼻取れたのとか脳までやられてるのは竜魔術で修理。


『全ての病よ消え失せよ』


 天使とか見た事ない奴らが拝み始める。竜魔術ならキュアで治らないレブラや性病の奴まで治せるし、天然痘とかコレラとかも見境なく治る。



 番屋の警察消防救急まで来て「第四出場かよ?」と言うぐらい全員集合。


 さらに高そうな馬車がいたから魔眼で鑑定すると「領主」と出たのまでお忍びで見に来て大騒動。これで悪の組織も修道士会も見逃せないだろう。また領主もグルか?


「やいやいやい、このシマでシノごうったあ、ふてえ野郎だ。俺達にみかじめ料払わないで、ぐはあっ」


 何か言う前にスラムの連中が袋叩きにしてくれたから、ヤクザ者リタイア。街中のルールは壁の外では通用しない。


 無償治療で食料の無料配布だから、金は一切稼いでいない。全部持ち出しだ。



 街の外周一周回るまでには、門番とか番所の役人共も妨害に来たし、修道女会やら修道士会も来た。


「何をしておるかっ? 無償で治療などと馬鹿げたことをっ」


 修道女会のババアには褒められたのに、金目当てで治療してる男の修道士会の連中からは大目玉。


「ははっ、冒険者で自由騎士などをやっておりまして、修行と功徳を積むためにスラムの住人を治療しております。金払いが良い町人などは治療しておりませんので、悪しからずご了承ください」


「直ちに中止せよっ! 解散だっ、散れっ、皆の者っ」


「町の者は修道士会に行けますが、町の外周に住む者は治療を受けられません、お見逃し下さい」


「俺達の治療の邪魔すんのかっ?」


「殺せっ!」


 今回も袋叩きにしてくれて、自分勝手すぎる修道士もリタイア。



 旅の騎士か聖騎士の振りをして治療して回るが、鑑定士が見たら「暗黒竜」と書いてあるからビビっただろうか?


 まあ偽装してあるから、普通の奴には見抜けないか。


「ああ、聖人様、ありがとうございます」


「この子の命もお救い下さい」


「エクスヒール」


 街の外周を一周し終わって、街の外から来た治療希望者まで治してやったら、領主の屋敷からお迎えが来た。


「聖人様、街を救って頂きありがとうございます、領主が面会したいと申しておりますので、是非お越しください」


「いえ、まだ孤児院や治療院を回っておりません、後ほどお伺いさせて頂きます」


 油が抜けたような顔して、目付きもヤバイ宗教家みたいな目して、修験道か導師の振りして孤児院行き。


 またルリ子さん(仮名、源氏名?)がいれば、兄に「妹をファックしてよし」と言って貰えるぐらい寄付して治療してやろう。


「あれ、暗黒竜のクランの奴じゃないのか?」


 外見も認知疎外の魔道具使ってるから、まさか本人とは思ってないようだ。



「おっと、ごめんよっ」


 やっと街から悪の組織が接触してきて、胸ポケットに入れていた入町用の鑑札を盗んでいきやがった。


 そっちは本物だから、キッチリ「暗黒竜ダリーシュ卿」と書かれている、喧嘩状とか殴り込みの挨拶だから受け取ってくれ。


「おや、市街に入るための鑑札を奪われました、これでは入れませんな」


 どこに持って行くかは追えるし、舎弟と弟が調べてくれるか追跡してくれるだろう。


「構いません、お乗りください」


 領主家の馬車に乗せられると、孤児院に行く約束のはずが、やはり領主の館に連れて行かれた。


 孤児院は奴等の手勢で固められていて、子供のを隠すのに出荷作業中で、やっぱり鬼が脳みそ食うためにバーコードとか番号で管理して、肉牛みたいに育ててんのか?


「おや、お約束の孤児院ではないようですが?」


「どうぞ、まず領主がご挨拶をしたいと待っております」


 部屋に案内され、待たされる間に茶が出たが、やっぱり痺れ薬入り。それでも何しに来たか聞くために一応領主か領主の偽物が入室して来た。


「おお、自由騎士殿、町の周辺をお救い頂いたそうだな、まず褒美などをやろう」


「いえ、修行のためと功徳を上げるためと、魔獣や魔物を狩った業を落とすための作業、お気遣いなく」


 雇われてない騎士爵や騎士聖騎士は実際そうしてるから、鑑札持って行ったスリが悪党に上納して、鑑定機に掛けるまでは身バレしない。


「それだけの腕前、我が家で雇いたいのだが?」


 簡易鑑定か、鑑定家がいて偽装レベルぐらいは見えたんだろう。まずは懐柔策。


「いえ、修行中の身ですので、どうかご容赦ください。今の自由な身も気に入っております故、家庭を持って身を固めるまでは、魔の森と都市の往復をしたいのです」


 テンプレ発言だが、お仲間?は多いので、うちのクランに入ったり、もっと自由でいたいのはソロやチームでやってる。


 そこで侍従が部屋に来て、メモか何かを置いて少し耳打ちして行った。


「そうか、やはりそうか、暗黒竜ダリーシュ卿」


 こいつらが悪党で確定、俺が来たら全滅確定だろうに、なんでドヤ顔して笑ってる訳?


「痺れ薬も効いてきた頃だろう、魔法禁止の邸宅の中で、荒事も剣技も魔道具で使えまい、さてどうするつもりだね?」


 ああ、痺れ薬が効くとでも思ってんのか、魔道具?今座ってる椅子が何か封じてんの?


「よいしょっと」


「何故動けるっ?」


 どやどやと手下が入って来たみたいだけど、一回捕まって牢屋行っとくかな?


 縛られてヤられたり、殺されるのは趣味じゃないから暴れておこう。


「どっこいしょ」


 とりあえず全員華麗に殴り倒して、死んでしまった奴は復活。


「ねえ、子供誘拐して実験してるってのどこ?」


「し、知らん、儂は命令通りにっ」


 半殺し、治療、半殺し治療を続けてたら、耳から虫が出て来た。


「おお、こいつか? 誰だっけ? 伏魔殿の悪魔の孫? 最近流行の虫で支配して命令って奴?」


 とりあえず次の宿主探したり、俺に入って来ないように全部電撃で焼いて焼却。


「リザレクション」


 領主か偽物は、四分以内どころか、何か月も前に脳食われて死んでたみたいで復活できない。


「領主殺し……」


「ああ、コイツ伯爵ぐらいだろ? 俺侯爵だから無礼討ちな。国を支えるダリーシュ卿を殺害しようとした連中だ、吐かないと皆殺しだぞ?」


「そ、そんな無体な」


『蘇れ』


 竜魔術の蘇生呪文だと、心臓が生きてたから魂ありって事で、食われてた脳も修復して生き返った。


「わ、儂は今まで一体?」



 殴り倒した連中には電気の拷問が効く、致命傷にならないし、神経焼かなかったら後遺症も無い。


 頭の中に虫がいるのは、証拠保全に虫ごと電気で焼き殺すか、情報持ってそうな侍従か家令は竜魔術で復活させる。


 クズを復活とか治療しようとすると魔物が降りて来るから、そいつらは諦めてあの世行き。


「は~い、家令の旦那ご機嫌いかが? 今まであんたらは王太子で伏魔殿の悪魔の孫に、頭の中に虫入れられて、領主と仲良く虫に操られてた訳だ。俺は孤児院とかスラムのクソガキを救いに来た善人、何か言う事はあるかい?」


「かたじけない、主人までお救い下さり、感謝の念に堪えません」


「うん、そう言うの良いから、修道士会とか孤児院がどうなってるか教えて欲しいなあ?」


 家令と領主は今までの記憶があったようで、カクカクシカジカで説明してくれて、支配ツリーとか孤児院の現状も教えてくれた。


「孤児の中からさらに選別され、適合計数が高い者が実験に使われております。どうかお救いを」


 後ろで猫型ドローンとか、上では虫型ドローンが映像と音声拾ってるみたいだけど、明かに普通の猫とか虫と気配が違うし、虫は紛らわしいから勘弁してくれ。



 領主家の連中を集めて、追走して来たサポートスタッフに任せて、頭に虫がいるのはどうにかして、死者蘇生が使える奴に生き返らせるか、クズ過ぎて竜魔術でも魔物が来るようなのは諦めて殺した。


 まだ番屋の連中や衛兵は汚染されてなかったようで、証拠品として頭の中から虫が出て来るのや、頭の中食われて操られてた死体も見せ、番屋の連中が虫に食われないように焼却処分。


 操られてたのは領主家に修道士会に孤児院関連。修道女会はエトワールのババアが操ってるから王太子の虫は入り込んでない。


 今後ぶっ殺さないといけない野郎共は、伏魔殿の悪魔、その孫の王太子、エトワールのクソババア、正義回路が滾る悪人どもだ。



「次は孤児院攻めてみようか? それから修道士会?」


「はい、鑑札の行き先は孤児院、そこで上位の者に渡され、領主にも通報されております」


 サポートスタッフも否定しないみたいだから、まずは孤児院で子供の救出。


『羽ばたけ』


 近距離だから浮いて行き、低速飛行で上から直接侵攻。舎弟も弟も降りて来た。


「領主家との連絡が途絶えた、虫は大半殺されてるっ」


「何て奴を呼び寄せたっ? 責任問題だぞっ」


 こちらも蜂の巣をつついたような大騒ぎ、ついでに庭園に二羽も火竜が降りたもんだから、誰も太刀打ちできない。


 それでも虫に命令されて突っ込んでいって、ブレスで焼かれるのを繰り返してる。


 あいつら自分?の命も惜しまねえから質が悪い。



 俺の方は屋上から三階に侵入して情報収集。


「ねえっ、あいつの鑑札盗んで来たんだから弟を返してよっ」


 さっきのスリだ、声からするとまだ少女かょぅじょぐらい、弟が実験されてるから命令に従っても、返して貰えないってとこか?


「よう、どんな具合だ? 弟返して貰えねえのか?」


「て、天使っ?」


「俺は暗黒竜だ」


 光る羽生やしてるから天使に見えるらしい、こんなひねくれた暗黒装備の天使がいて溜まるもんか。


 話してた孤児院の経営陣も伸して、電撃入れてやると頭から虫が出て来た。


「クワイエットサンダー」


 虫は焼き払って、この子にも悪い虫が付かないように処理。


「さて、弟がいそうな場所に案内してくれ」


「う、うん」


 最上階から下に降りて行き、それらしき施設を探すが何もない、通り過ぎる奴らも火竜二匹に向かって走って行くばかりで、俺らには感心が無いようだ。


「この建物にはいねえな、他も当たるか?」


 子供が収容されてる施設にも行くが、ここに置いてる少年少女には「才能」が無いのか、安全な場所で監禁されてるだけ、地下階とか牢屋みたいな明かに怪しい場所も無かった。


 なら正教会に出荷済みって話だ。


「よ~し、こうなったら修道士会に直接殴り込みだ。居残り組、後は頼んだぞ」


「お任せくださいっ」


「行ってらっしゃいませ」


 陸上移動のサポートスタッフが追い付き、火竜二匹と共同で制圧中。


 孤児院から出て来る、黒服とか全身タイツみたいな戦闘員が出る間は、変身しないのがお約束だ。


『羽ばたけ』


「俺も連れてってくれよっ、どうしても探さないとっ、死んだ母さんからも弟を頼むって言われてるんだ」


 このスリのメスガキは置いて行くつもりだったが、どうしても弟を探したいらしい。面会してもどれだか分からないしな。


「ああ、ゆっくり後からついて来な、その頃には型が付いてらあ」



 小娘は徒歩で行かせる。その頃には終わってるだろう。


 俺は貴族街と平民街に跨っていて、両側に門がある修道士会に降り立つ。


「来たぞっ、暗黒竜だっ」


 そこは悪党の巣窟だった。人間と同じ反応が返って来る奴がいねえ。全部バケモンだ。


 まず修道院長か誰か、金ぴかの法衣とデッカイ帽子被った馬鹿と、その手下達が歩み出て来た。


「暗黒竜よっ、その脆弱な人間の体で、我が怒りを受け止めることが出来るか? 我らが崇高な望みすら知らず、愚かな思考だけで信徒達の思いを阻もうとする愚物が、この天使体に触れることすらできぬまま葬ってくれようぞ」


 頭の中を虫に食われもしないのに、悪行を重ねて実験し、子供達の犠牲の上に立って、自らを化け物にして弱き者を挫き、上位に立とうとする魔物。


 元は修道士だったのか、聖人だったのかは知らねえ。どんな崇高な思いでやらかしやがったとしても、お前らは市民で人間の敵だ。


「滾る、滾るぜえっ、正義回路が悪を亡ぼせと燃え滾るっ! 熱い血の塊が俺に正義を成せと泣き叫ぶっ!」


 チンケな喧嘩屋だった俺に、男の使命を与えてくれる回路で呪物、正義回路。


 そいつが、俺の相棒がこいつを叩きのめせと雄叫びを上げる。


「変身(チェンジ)、正義回路(ジャッジメンター)、スイッチオンッ!」


 暗黒竜に変身してやっても良いが、そうするとこの街ごと更地になる。丁寧に悪党を一人づつ倒すには、この身体の方が良い。


 左胸の心臓の上にある変身スイッチを押すと、加工が不可能なはずの暗黒竜の鱗が溶けだし、俺の体を包む。


 胸の前と後ろに破壊不能な鱗で出来た胸当てが出て来て、腹や背中や横腹を覆う、脊髄パッドみたいな小ぶりな鱗も重なって出現。


 正義回路が出す金属が暗黒竜の鱗を固定して、手甲に脚絆も膝と膝の棘も鱗のブーツも装備、ヘルメット代わりに竜の顔を模した仮面も出て頭を覆って、首には金色のマフラー。


「只今到着っ、正義執行っ!」


 人間の姿を捨てた怪人共を薙ぎ倒し、一直線にデカイ面してる奴を狙う。


「馬鹿め、裁きの雷を受けよ」


「おおっ、法王様の裁きの雷」


 この俺様に向かってチンケな雷が落ちるが、そんなもん効きやしねえっ。


「レジストッ、討ち払え地獄の雷よっ! ジャッジメントサンダーッ!」


 奴が出した数十倍の黒い轟雷で怪人共を焼き尽くす。


「うおおおおおおおおおっ!」


 腐った天使体とやらを、一人残らず全部焼き払ってやる。


「グガガガガガッ」


「ギャアアアアッ」


「うわああああっ」


 消し炭になった者、手足の神経を焼き切られて倒れた者、雑魚は全員始末した。


「復活、神の力よっ」


 法王だか何か知らんが、馬鹿が一人回復魔法で復活。


 胸に明かに魔物の魔石付けやがって、一体どこが神の奇跡なんだよっ?


「唸れっ、正義の拳よっ、ジャッジメントハンマーッ!」


 マフラーが本体の推進装置で、背中からも噴射。左でジャブを入れながら牽制し、本命の右ストレートで抉り、魔石に重すぎるパンチを叩き込んでやる。


「ブレイクッ!」


「ぐはああっ!」


 まず魔石を粉々に砕いてやり、拳がビカビカと光り輝く。


「復活、神の力よっ」


 砕いたはずの魔石まで元に戻り、クソジジイが復活する。


「何度でも砕いてやるっ、ジャッジメントハンマーッ!」


 その場に立ったままのドツキ合いになり、殴っては再生し、砕いては再生し、削って擦り潰して砕いて壊してやった。


「おごああああっ」


 ヒットポイントも魔力値も削り終わると、全身の骨が粉々になったジジイが転がった。


「ジャッジメントサンダーッ」



 残骸を焼いてやっても、まだ生きてるジジイは神像に縋った。


「神よ、お救いを……」


 お? 何だ? 一回ヤられた後はロボ戦か?


「摩訶不思議転移時空」


 クソジジイが巨大な神像と合体する前に、転移ゲートに引き込んで、採石場か荒野が広がる特殊空間に送り込んでやった。


 ここなら心置きなく暴れてヤれる。


「変身(チェンジ)、暗黒竜モードッ! クロスアウッ!」


 正義回路で作った鎧を外し、全裸から暗黒竜モードに変身。超兵器ドルー的なのも自分でヤル。


『出るなっ、俺の中の闇よっ、この世界ごと滅ぼそうとする深紅の闇よっ』


 お約束の闇設定とか世界破壊設定も小出しにしておいて、色設定とかも少々おかしいが、その辺の整合性は無視して戦う。


 そんな時には、ゆでたまご先生のお言葉「少年漫画に整合性は必要ない」を贈ろう。


 まあソッチ系の暴走は、毎回のヒロインとかマドンナが解決してくれる。



 そうこうしている間にクソジジイが復活して、神像と合体して攻撃して来た。


「キイイイッ」


 もう人間の心なんか失ったようで、巨大な天使像で究極天使体か牛魔王のコピー体と合体して、七色の魔法を放ってくる。


『絶対防御魔法陣よ我を守れ、耐火耐熱耐冷却耐雷撃耐土耐木耐水耐風っ』


 魔法攻撃を受けてやる義理は無いが、無駄なのを思い知らせてやってから反撃。


 中盤以降は助けに来た火竜と合体したり、勇者シリーズなら火竜がダブルで左右色違いで合体したり、デブ系のスゲエガタイのロボになって必殺技を放つもんだが、序盤なのでキニシナイ。


『最強ブレス、滅びのジエンデッド』


 ジエンドとかデッドを掛けた自演ドで終了させてやる。


「ぐわあああああっ!」


 何かエコーでも掛かったような断末魔の叫びを上げて、着ぐるみ?か神像の各所で弾着の爆発が起こり始め、やっぱり採石場の形が変わるぐらいの爆発で、カメラの引きが凄い状態で画格一杯の大爆轟。


 1カメ2カメ3カメの爆発編集は、下級天使がやってくれるだろう。



『変身、暗黒騎士モード』


 レーザーブレード的な物で空間を切り裂いて、元の時空に帰還。


「頭領っ、お帰りなさい」


 怪人?は全員倒しておいたので、追い付いてきたサポートスタッフが修道士会も制圧済み。


 スリのガキも追い付いてきたようで、弟を探している。


「弟がっ、弟がいないんだっ」


 駆け足だったので、今回のヒロインとの絡みがカットされたが、そこは毎回エンディングで肩組んで一室に入るから、後でヒーヒー言わせることになるはずだが、ちょっと幼すぎるのでパス。


 孤児院かクランで育てて数年後だろう。


「地下の実験室だ、見て腰抜かすなよ」


 いつものお約束通りなら、既に弟は実験に使われて失敗して「コロシテ…… コロシテ……」が普通なので、気を確かに持つように言っておく。


「ひいいっ」


 地下実験室に入ると、いつも通り失敗体が水槽で浮いててビクビクしてる。


 ナディアならガーゴイルに案内されながら、立ち止まってゲーゲー吐いて、銀魂とかこのすばのアクア並みに虹色に加工したブツを吐きまくる所だが、どうにか耐えている。


「ああっ、キテカッ、キテカ~~ッ」


 それでも生臭い実験施設の中で弟を見付けたようで、人魚と言うか魚人にされ、ちょっと「見せられないよ」系統の失敗作の腹に、人間の顔が付いてた。


「コロシテ…… コロシテ……」


 やっぱりリプリーさんの失敗作みたいに、バーナーで燃やして欲しそうな弟。


「どけ、俺が治してやる」


 沼に嵌めてやる系統の話じゃないので、涙と涎と鼻水垂れ流させて、ガクガク震えて神を見るような顔して貰わないで良いのだが、弟も他の実験体も、分離したり生き返らせるのが可能なのはどうにかしてやる。


『哀れな生き物に再び命を、死者蘇生』


 暗黒竜的な復活呪文で人間の方だけ分離して復活。水槽の前に印字されるように弟が出現し、海魔の方も何故か復活。


『アニキ、おれを舎弟にして下せえ』


 ついでにデカイ海魔が舎弟になった。アイテムボックスの中で非常食になろか、今夜の祝勝会のツマミになってくれないか?


「キテカッ、助かったのねっ?」


「姉ちゃん……」


 まあ、俺っ子をメスの顔にしてやったので、良しとしよう。


「ああ、暗黒竜様、どうやってこの御恩をお返しすれば良いのかっ」


 ペリーヌのジジイみたいに「神よ、この幸せにどのように感謝すればよろしいのですかっ?」みたいな感じで泣いてる姉弟。


 二人共完全に俺を信仰の対象として見ていて、目付きがヤバ過ぎるのが問題だが、数年後致すときには治ってるだろうか?


 服の手持ちが無かったので、全裸の少年少女が大量にできてしまい、地下からゾロゾロ連れ出して「え? 頭領、全部ヤっちまったんですか?」と思われたが保護しただけ。


 ショタとロリの趣味はねえっ。



 クラン


 これで入菌(入金)がなかったとか、最後に貧しくアジサンド食ってたらオチが付く所だが、また街でも宗教法人乗っ取って、孤児院施設も全部押さえて慈善団体設立して非課税。


 修道女会から天下りで修道院長連れて来て、商業ギルドのババアも連れて来て二人共ヤってしまい、クランがある街と似たような展開に。


 修道士会は壊滅させて別の修道士会を立ち上げて支配。聖国サレンディールに本当の敵がいるか、王太子と伏魔殿の悪魔とエトワールのババアを倒さなければならない。


「いやあ、今回も素晴らしい成果でした。次回からはアマトンプレイムやネットフレックシから予算が出まして、ワンクール13話の製作が決定しました」


 そのナンチャラ言う組織って、全部地面の下の奴らじゃねえかよっ。


「今回と前回は単発の番組でしたが、次回からは大予算で展開できます。もちろんメディアミックスもアリアリ、凄まじいまでの黒字でその上に非課税。国外の口座にハードカレンシーである古代王国金貨として入るので、文字通りの地下取引。政庁や税関や国税庁にも検知されないで入金されます」


 うん、修道士会より、こいつらの方が悪党。


「第一回の脚本としては、見知らぬ少女から「人殺し、悪党、人非人」と罵られてからの開始となって、全ての事件を解決した時「好きぃ、もう貴方しか見えないっ」となる予定です。


 なんでそんなとこまで操作できんだよっ、今回のも修道士会が悪の道に嵌ったのも、全部こいつらの思惑通りじゃねえのかっ?

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暗黒竜ダリーシュ、変身正義回路(チェンジジャッジメンター) @piyopopo2022

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