わん・せんす

八五三(はちごさん)

わんだふる。

 今日は嫌な予感が朝からしていた――俺は。

 だが、

 いつも通り、気持ちよさそうに、隣で寝てる。のが、相棒バディの――白である。


「おい、白。ナニか? 感じないか」

「ぅ。ね、ね、ぶたい、感じする、よ……黒」


 これが、俺の相棒だ。

 おっとりした性格のいいヤツである。が、少しお間抜けさん、な、ところがある。兄貴分として、俺が守ってやらねばならない。


「俺の尻尾しっぽが。さっきから――うずくの、さ」

「それって、ノミじゃない?」

「白、よ。思い出せ。昨日、おじょうに、お風呂入れてもらって、さらにシャンプーまで、してもらってることを」

「ぁー。気持ちよかった、ね、黒」

「そうだ、な。気持ちよかった、な。丁寧にブラッシングもされたし、な」

「ふわ、ふわ、もこ、もこ、に。なった、ね」

「愛らしい俺たちが、より、愛らしい――ふわもこ姿になった。と、おじょうが、喜んでいたな。って違う!」

「違った、ね。黒の尻尾が、疼くのノミじゃなく、て」

「そうだな、ノミじゃなくて……ぅん? いや、俺は最初からノミの話をしていなかったぞ、白」

「なに、の。話し、してたっけ? 黒」

「ナニか? 感じない、か。の、話をしていたんだ、白」

「うーん。ナニも、感じない」

「そうか、白。白はナニも感じない、か。俺は感じる、俺は感じるんだ。俺の第六感わん・せんすが、ささやくんだ――逃げろ! と」

「うーん。やっぱり、ナニも、感じない、よ。黒」



「くろ~ぉ~、しろ~ぉ~。おさんぽ、いく、よ~ぉ~」



『ぎゃぁぁぁぁぁーーーーー!!!!! 怖い、恐い、こわい、コワイ、よーぉーおおおおおーーーーー!!!!!』

「逃げるなぁー、黒! 野生の勘第六感で気づきいたな、予防接種に連れて行かれることを。まぁーあーてーぇーえー!」


 これが、僕の相棒あいぼうだ。

 頭がよく、しっかりとした性格で、頼れる兄貴分なのだ、が。少し残念なことに、お注射が大の苦手なんだ。

 黒がおじょうに、捕まるまで、寝てよ。

 僕はお注射、苦手じゃ、ないよ。

 では、

 おやすみなさ~い~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わん・せんす 八五三(はちごさん) @futatsume358

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説