第46話 天変地異
アイリスが姿を消してから、アルカシラは大災害に見舞われた。豪雨。森林火災。地震。落雷。そうそうアルカシラでは見られない災害がほぼ同時に発生したのだ。
そして、その危機を救ったのがテクノロジーだった。災害発生地域の推定から、非難指示、防災、再建、復興、ありとあらゆることをテクノロジーが導いたのだ。
同時に、アルカシラに好ましくない変化が起きた。テクノロジーが主流になったことで、魔法が大きく衰退してしまったのである。
「魔法ってあっけないんだな」
シークが苦笑い気味にそう呟けば、キドラがゆっくりと首を横に降った。
「そうでもない。俺たちの世界では、一度魔法の存在がファンタジーとして流行ったことがあった。それからテクノロジーが進化するときは、いつも『魔法があったらできること』の実現というのがベースにあったんだ」
「つまり、テクノロジーは魔法の上位互換ってこと?」
「……まぁな。だが、確実に違うのは、魔法はそれぞれ適正があるのに対して、テクノロジーは皆平等であることだ。つまり、この世界のパワーバランスがテクノロジーによって変わってしまったわけだ」
キドラの説明に、シークが顔をしかめる。それもそのはず。そうなった責任は、必ずキドラたちに向けられるのだ。
「あれから人間王はアイリスを逃した失態で国王降りてサラと一緒に傷を癒す旅に出たでしょ? ミナとレオは結ばれていま同棲中でしょ? ということは、人間王になった俺とキドラが非難を全集中で受けるわけよ」
「おまえだけじゃだめなのか?」
「え? 見捨てないでよ? 俺、キドラを絶対離さないから」
「怖いこというな。後、付き纏うなよ? 気が狂う」
そう言ってキドラが溜め息を吐く。口先ではそう言ったが、実際、キドラは他の王たちから圧力をかけられているのだ。アイリスは本当にめんどくさいものを残してくれたわけだ。
再びキドラが溜め息を吐いたときだった。
「キドラどのー!」
バタバタと廊下を走る音が聞こえてくる。ベルドとマルクス、ガリメロ、トルドーの四人だった。
「彼らはTP幹部になったんだっけ~?」
シークの問いにキドラが頷く。
あれから、後退した魔法を復活させるべく、TPがテクノロジーを用いた魔法の解明を行うことになったのだ。魔法は数式であることが判明したため、公式を打ち出して、魔法の教育を広めていく算段だ。
魔王軍や吸血鬼はあれきり姿を消したため、その捜索もTPの仕事だ。
「キドラ殿、魔法教育のお試しの件だがーー」
「団長! 吸血鬼の生体反応が探知されたみたいです!」
「「なに!?」」
トルドーの慌てた声に、キドラとベルドが一斉に振り向く。そして、トルドーが説明し終わる前に、二人は駆け出していった。
「あ、でも反応は局所的に見られるのでーー……」
「あーあ、話聞かないのなんの」
当然、局所的な現れ方に居場所を断定できない、との情報はスルーされる。たちまち漏らされたシークの苦言に、マルクスたちも苦笑いするしかなかった。
こうして、キドラの異世界開拓記録はもう少しの間続くのだった。
(完)
異世界サイボーグ冒険記 @Wasshoi07
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