最後に愛が勝つとはいうけどもじゃあ愛ってなんですか説明できますかアナタ

白川津 中々

 俺の直感は外れる。

 くじででは四等くらいしか当たらないしババ抜きでは必ずジョーカーを引くしじゃんけんでは連戦連敗。珍妙なメニューを注文したら絶対に不味いし自販機で悩んで購入した結果毎回「あっちにしておけばよかったな」となる。

 この勘の悪さは付き合う女においても適用され、いいなと思った女はDV、束縛、モラハラ、ヤク中などヤバイ方々ばかり。俺には恋する資格もないのかと落胆するのだがやはり人恋しく諦めきれず、恋愛において負け戦上等で挑むのである。夢中になってる時は「相手がどんな女だろうが大丈夫。覚悟はできているぞ」なんて思うんだけどね。時間と共になくなるよそんな気概。

 そんなわけで懲りずに惚れた女と交際しているわけだが、今回の相手は多分大丈夫な気がする。既に三か月経過が殊更問題はないのだ。これは奇跡が起こったかと神に感謝。センキュージーザス。






 そんなわけで今夜は勝負だやっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!






 と、意気揚々と挑んだのだが、問題が発生。

 


 男だった。

 あの子。ついてた。立派なものが。



 なんてベタな展開。こんなもん完全に予想通り過ぎて「さすがにないやろぉ」とたかをくくっていたらそうなっちゃったよ。擦られ過ぎて傷だらけのストーリーに笑いも出ねぇ。



 でも、性格はいいしなぁ……料理は美味いし、しっかりしてるし、金も持ってるし……

 ……そうだよなぁ……ちょっと股に業物がついてるだけで、それさえ我慢しちゃえば女の子だもんなぁ彼女(?)。そこだけ我慢すればまぁ……ここでお別れして、またろくでもない人間と付き合う羽目になったら嫌だしなぁ……というか愛着もあるし……いやでもお前、男だし……無理じゃね? どんだけ頑張っても性別がなぁ……




 

 ……コインで決めよう。

 考えるだけ無駄無駄。困った時の神頼み。これはもう見えざる力に頼って解決してもらう他ない、そうしよう。

 てなわけでコインを準備。表裏、俺が宣言した方が出ればお別れするという方式! よぉし! いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! コイントス!





 



 俺はどうしたいんだ……







 急に浮かぶ自問自答。

 俺は彼女(?)と離れてしまっていいのか? 


 一緒に行ったデートの数々。控えめな微笑み、共に過ごした時間、記憶……これを全てなくしてしまって、本当にいいのか。いいのか、それで……






 コイントス完了。

 ……裏が出る気がする。いや、俺の勘はあてにならん。であればその逆を選択すれば……いやいやその逆という事も……






 ……







 ……やめた。





 くだらない、相手が男だからなんだってんだ。俺はあいつが好きだから付き合っているんだ。それでいいじゃないか。こんなコインなんだ! ぽい! そんなことより電話だ電話! 俺は今! 途方もなく彼女の声が聴きたいのだ!




 手の甲に置かれたコインを放り投げ彼女に電話! 伝える言葉は……





「これからもよろしく」


「……はい」




 彼女の、啜りに泣きながら出したであろう声に胸が痛んだ。


 あぁ、俺は、好きなんだ。

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