第3話ー視線の種類ー
愛理にまんまと騙されたっ! と心の底から痛感するまでそう長くはかからなかった。
登下校を共に歩み始めてから、割とすぐに後悔する羽目になったのは、生徒が僕たちに向けてくる視線の種類によって。それは二つあった。
まずは一つ目は愛理に向けてだ。
さきほど、『僕たちに向けてくる』と言ったが、愛理単独に対しての視線の数は格段に減った。
入学式の時に何度も何度もチラチラと愛理を垣間見てた男子たちが一人もいなくなったということ。
付き合ってるカップルとして普通に見られることはあっても、頬を染めて愛理を見ることはほぼ0になっていた。
ただ、それが愛理にとっては好都合で。
そこで最初の疑問が僕の中で微かに浮上していった。
そして、次にあともう一つの種類について。
僕に対しての視線の話……これが一番の問題だった。
興味0
学校一のマドンナ(になる可能性を秘めた)の彼氏
この両極端の視線しかないことだ。
気にしすぎだ、気のせいだ。
そう言われることはわかっている。でもこれはさすがにどんな鈍感男でも気付けるレベルだった。
興味なしの視線については、僕ならば愛理と付き合っていてもいなくても、同じことだったと思う。
ただ、彼女持ちかそうでないかの『興味0』では今後の過ごし方が変わってくることに僕が気づいてしまったから問題なのだ。
だってそうだろう?
誰が好き好んで彼女持ちの男を好きになる?
漫画に出てくる主人公レベルなら起こりうる可能はある。だけど、僕に限ってはそんなことが起こるわけがない。
あぁ、僕の高校生活はここで経たれてしまったんだ。
そう落胆せずにはいられなかった。
結局、契約を結んで利益があったのは愛理だけだ。
登下校での愛理の満面の笑みを横目で見た僕は徐々に『あの疑問』が大きくなり、利用されたことに衝撃を得た。
クラッと目眩が起きたときに、幼い頃の記憶が舞い降りた。
それはこどもの日のこと。愛理が欲しかったトミカを僕が欲しいことにされて、実質自分は欲しいものを二つ買ってもらうことに成功し、僕は渋々そのトミカで我慢した映像がフラッシュバックした。
僕はなんてバカなんだ。
「勇斗の良いところは素直なところだよ」
愛理はそう言った。
「そんなおだてたって何にもならないよ」
この関係になって僕が利用したかったことは、珠世ちゃんの気持ちだ。
僕のことを少しでも意識してくれたら、この契約は大成功だ。
そのことを確認しようと何度もトライした。
話しかけようとしたり、なんとか接点を探した。
でも接点なんて欠片さえも見つからないし、話しかけられるもんなら、今頃とっくに会話の一つや二つ出来てるさ。
これから僕の三年間の過ごし方が一気に浮かんだ。このままずっと……このまま……何も変わらず。
そんな暗闇の中、一筋の光が見え始めたのは六月初旬に差し掛かった頃。
六月後半には体育祭がある。
僕はこれに掛けることにした。
可愛すぎるイトコと僕の平凡な日常物語 迫山ゆいね @chipude102
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