超能力研究所は今日も平和です!

兎緑夕季

超能力開発は遠い…

 あらゆる科学技術が超越した時代。

ロボットは一見すると人間と区別できないほどの進化を迎えていた。

自分で考え行動する。

希望があれば人らしく年を取り、命を全うすることも珍しくなった。だが、それに意を唱える人間たちも存在した。

彼らはロボットと人の境界線を明確にするために研究を始めた。

それが超能力開発研究所である。


「博士…なぜ、超能力なんです?」

小柄な少年は白衣を着た年配の男に問いかけた。

「セス…第六感という言葉を知っているかい?」

「第六感?虫の知らせとかいうやつですか?」

「そうだ。人は古来よりなんとなく危機を察して回避していたんだ」

「はあ…」

「だからね。人とロボットの境界線はそこにあると私は考えるんだよ」

「超能力は人にしか見につかないって事ですか?」

「そうだとも。超能力を身に着けられればロボットより上位の存在になれるはずだ!」

「そもそもロボットより上にいく必要性あるんですか?」

「あるに決まっているだろう。彼らが人間ぽくなったせいで私達はやる事がなくなってしまったんだから」

「まあ…でも僕はずっと遊んでいられるからいいかなって思ってる」

博士は大きなため息をついた。

「諦めてはいけないよ。セスだって好きな女の子をロボットに奪われたって嘆いていたじゃないか…」

「そうだけど…もう5年も前の話だよね?僕だって新しい彼女できたしさ。もういいかなって」

博士は明らかに落ち込んだのかその場にうずくまった。

「ひどいよ。こっちだって頑張ってるのに!」

「ああ、もう泣かないでよ。付き合ってあげるから」

セスは何とか博士を立ち上がらせる。

「そうか。なら、昨日の所からだ。この鉛筆を浮遊させるぞ!」

博士は手を前に出し、念を込める。だが、テーブルの上の鉛筆はびくともしない。

「ねえ、博士」

「なんだい」

「鉛筆を浮き上がらせて何かメリットあるの?」

「なっ!失敬な。何事も小さい所から一歩ずつだろう」

「そう言って、何年そのポーズやってるの?」

「50年目だ!」

セスはあきれて頭を抱えた。

「さあ、後一時間は頑張るぞ」

「はいはい」

今日も博士の超能力開発は前途多難であった。

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