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「まさか供養とはね……」

 諏佐三津丸はテレビ石に映し出された事務所の録画映像を眺めながら、小声でそう独りごちた。

 スイートルームに備え付けられたベッドの一方では、修治が安らかな寝息を立てている。……流石に疲れたろう。

 修治は一晩のうちに二回も魔女を降ろした。想定以上の出来栄えだ。

 これならわざと家を空け、盗みの時機を窺っていた竜胆兄弟に外で目撃された甲斐もあったというものだ。あの兄弟にも感謝しなければ。

 ……まあ、欲を言えばあの兄弟のアーティファクトは早々に回収して、無力化させておきたかったところなのだが。修治の意向とあれば溜飲を下げざるを得ない。

 修治を利用する立場であることに変わりはないが、三津丸は鴉修治その人のことだって大好きなのだ。だから修治の願うことは全部叶えてやりたいし、寂しい思いはさせたくない。


 ──たとえ修治の願いが行き着く先に、自身の破滅があったとしても。


「……まあ、アーティファクトなんて世界中にいくらでもあるし……?」

 別れまでの時間はまだ存分に残されている。修治の寿命が尽きるまでに集めきれるかどうかだって怪しい。……今はそう自分に言い聞かせながらやっていくしかないだろう。

「貴方のことは必ず幸せにするよ。種の誇りにかけてもね」

 三津丸はテレビ石のディスプレーに接続していた監視用の蜘蛛を抜き取り、背後のベッドを見遣った。

 その存在の小ささとぬくもりを空気越しに感じつつ、三津丸は新たなアーティファクトの在処を占う。

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魔女の宝石 蓼川藍 @AItadekawa

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