天使の頼み事。「第六感を磨いてくれ」(世界平和に向けて、その③)
月猫
閉じられた第六感
「あぁー、ったく。」
巻き毛の黒髪をくしゃくしゃにして、
腰かけている大きな岩は、沈む太陽の光を浴びていた。
バサリ、バサリ。
「どっこいしょ」
そう言って大きな羽をたたみ、隣に腰かけたのはガブリエルだった。
「
「あぁ。悪魔たちの推し活が凄すぎて、俺の言葉が全く届かない。参ったよ。お前は推しを見つけたのか?」
右手に持った白い百合の花を口元に近づけて、ニヤリと微笑む。
「うん、『カクヨム』で数名。それから、怖いもの知らずのジャーナリストも見つけたよ。今、推し活してる。特にジャーナリストたちは、命を懸けているから、頻繁にメッセージを送っているよ」
「メッセージ、受け取ってくれているか?」
「半々だね。 第六感・ひらめき・シンクロ。そういったものを信じてくれるタイプの人には通じるけれど、思考型の人にはなかなか……。 ミサイルや銃撃戦に巻き込まれないように『そっちに行くな!』ってメッセージを送ってはいるんだけど」
「だろうな」
二人は、太陽を見つめた。
太陽は、空一面を覆う雲を真っ赤に染めている。
それは、胸騒ぎを呼ぶ不気味な色だった。
「見ろ! この不気味な空を!!
いつも冷静な
「文明が進んで人間の第六感は、閉じてきちゃったからなぁ。嗅覚・視覚・聴覚・味覚・触覚の五感を超える直感。その第六感が、現代人に足りない……。精霊や天使や神との繋がりを忘れて、快楽や物欲の世界へ真っ逆さま。そのなれの果てが、これか……」
二人は、ぼぉっと太陽が沈むのを見ていた。
バサリ、バサリ。
また大きな羽の音が近づいてきた。
ふんわりとウェーブのかかった金髪天使、ミカエルだ。
「あっ、
「
「あぁ、わかった。
「戦場で張り詰めた空気を和ませようと、音楽を送っている。音楽家は、第六感が強いから、
「そっか。ねぇ、
「簡単なことだ。神や天使や精霊の存在を信じること。自分に嘘をついて生きないこと。ふっと閃いたことを大切にすること。全てを愛すること。それだけだ」
「うわぁ、今の人間が最も苦手としている生き方じゃん。ここで、愚痴をこぼしていてもしょうがない。僕も仕事に取り掛かるよ。お先!」
「
「悪魔の推し活にガードされて、なす術がない。だから、
「そうか、お前がいてくれて良かったよ。
「あぁ、わかった」
二人は笑みを交わすと、羽を広げ飛び立った。
平和を取り戻すために……
傷ついている人間を癒すために……
天使の頼み事。「第六感を磨いてくれ」(世界平和に向けて、その③) 月猫 @tukitohositoneko
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