密着!どうでもいいシックスセンス

ケーエス

感じる……感じるぞ…………

 私は微細なものを感じる第六感を持っている、そんな男だ。

「今日は取材よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」

 ディレクターがうやうやしく頭を下げた。奇特な感覚を持つ私には毎月のようにメディアから取材が来る。今日は「情熱列島」の取材だ。1日私の生活に密着するのだ。


 ――朝


 朝6時きっかりに起床。私はモーニングコーヒーを飲みながらテレビをつける。そしてリモコンを見つめる。リモコンの数字ボタンから感じられる熱量。

「今日は目潰しテレビを見ろ!」

「いや、The DIVEだ!」

「いやいやVIP!だろ」

 それぞれの数字ボタンが主張している。ためらわずに地方のテレビをつけた。

「今日の血液型占い!」

 お、さっそく占いコーナーが始まった。心躍る。

「O型のあなたは今日とんでもない災難に遭いそう! ラッキーアイテムは食パンの袋をとめるアレ!」

「やった!」

 私はそばにいるカメラに向かってピースサインをする。私の手元には食パンをとめるアレがある……。

「まさか」

 ディレクターがうなった。

「そうだ。これが私の第六感。今日のラッキーアイテムを的中させたのだ!」

「どうでもいいですね」

「どうでもいいだろう?」

 ここまでがテンプレ。


 ――昼


 私は普段仕事をしている。普通に会社勤めだ。私はトイレに向かった。入って驚いた。人が並んでいる。個室は全部で2個。2個……?



 一度平らにしてください。そしてその置物を2度3度ひっくり返してください。そしてそのまま答えも見つからぬ問をあてもなく、ただあてもなく探し続けてください。よく見ればしろたへの赤き旋律を奏でれば、きっと極楽浄土に行けるでしょう。新たに迎えられた兵士はどこへいくんでしょう。知りません。


 ぴょー、ぴょー、ぴょー。ぴょー。ふんふるふんふるピニャータ、五にゃータ。


 説明しよう!ふんふるふんふるピニャータとは五にゃータの進化形であーる。うるさい! ゴム手袋にしなさい! 亜鉛で溶かせば出来上がったも同然です。


 いいですか、人類保管計画は着実に進行しているのです。それをとめるためにはあなたたち、クレバードンビッシャイズの提供でお送りしなければならないのです! いいですか! No6! 聞いているのですか! No6!


 フワワアアアアアアアアアアアアアアアア!


「だ、大丈夫ですか?」

「え、あ、え」

 私はディレクターの顔を見た。そして下半身に何かを感じた。個室は空いていて、トイレにいるみんなあっけらかんとしてこっちを見ている。

 恥ずかしい! 私は我を忘れて走りだした。オフィスを異臭を垂れ流しながら走り続けた。

「ちょっと! すみません! 大丈夫ですか?」

 ディレクターが追っかけてくる。何だ何なんださっきのは? 変な妄想か。幻覚か。私の第六感が暴走したのか? そのままトイレの個室が空くのを待つのがいいのか、別の個室が空くのがいいのかがわかるだけのはずなのだが……。


 目の前には交差点。そうだ、私の第六感は信号があとどれくらいで変わるかを察知できるのだ…。 赤……。



 赤き旋律は行方不明。照らされるも踊らされるのも人それぞれ。わからぬ。この島の中腹に、いつ攻め入られるかわからぬ。そうだ、架け橋へ移行。メタなグロ×××には到底かなわぬ心がそこにはある。ひっひっひ、ひっひっひ……


 揺れ動く想い、どこまでも伝わっていくわ。あなたもきっとそう。優しく誰かを抱いてやって頂戴ね。私? 私は関係ないわ。No6、このことは極秘だから……


 ジィン、ジィン、ジィン……


 もしかして、まだ気づいてないの? まだ目覚めていないというの? メタシャンパスは主の元へ帰ったというのに。あなたはとっくの昔から点Pなのよ! 等速に動いていけばいいの!


 ばるばるばるばる………


 聞いてるの? No6! No6!


「大丈夫でえすか! 大丈夫でえすか!」

 目を開いた。そこにいるのはディレクターではなく、白い服を着た老人だった。ここは……病院?

「おっほ、やあっと目を覚ました」

 医者がほっとため息をついた。

「あなたは交通事故にあってしばらく意識を失っていたんですよ」

 そうか、私は交差点の信号を見たときにまた妄想を……。あれはいったい何なんだ? いったい私はどうなってるんだ? ここも現実ではないかもしれない。夢にしては鮮明すぎる。

「すいやせん。混乱しましたかねえ?」

 医者の顔をまじまじと見つめる。サイボーグONE? 脳にダイレクトにそんなイメージが残る。隣の看護師は……赤き旋律?

「どうしました?」

 自分の肩を抱き、震え始める私を見て医者は慌て始める。器具を取り付けようとする看護師を振り払い、私は再び歩こうとした。解脱。



 落ちましたね? 鉄塔。飛び散る火花……。崩れる、崩れる、崩れていくだけ……もう無駄だ。ひっくり返せ! ひっくり返さないと! ひっくり返さないと!



「大丈夫ですか」

 目を開いた。体じゅう、びっしりと汗が噴き出ている。目の前にはディレクターがいる。ひどく動揺している。

「私、また変なことを言っていなかったか?」

「ええ、うわごとをひたすら」

「最近、よくわからないことを感じることが多くてね。感じるというか入るというか。困っているのだよ」

「はあ……」

 ディレクターは喉に引っかかってしまった魚の小骨を飲み込んでしまおうか迷っているような顔をしていた。テレビの映像は血液型占いから別の報道番組に切り替わっていた。どこの誰とも知らぬ、刑事事件。

「あはは。もう大丈夫だ。さあ、仕事にでかけよう。多分今日は信号で止まらずにいけるだろう」

 私は笑みを浮かべてコーヒーカップを持って立ち上がった。ディレクターもカメラのテープを確認する。

 どうでもいいことばかりわかる第六感。少しは重大なことを感じてみたいものだ。















 No6 機能的エラー解消を確認 計画を続行

 サイボーグONE、赤き旋律 クレバードンビッシャイズ本社に帰還

 帝国軍により洗脳「データ破損」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

密着!どうでもいいシックスセンス ケーエス @ks_bazz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ