ファンイベント

黒幕横丁

漫才タイトル「推し活」

「『はいどうもー』」

『突然なんですか、俺、ハマっていることがあるんですよー』

「ハマっていること? なんでしょ?」

『推し活にハマっているんですよ。知ってます? 推し活』

「あー、好きなアイドルやバンドを現地に見に行ったり、イベントとかに参加したりする活動ですよねー」

『そうなんですよ。その推し活にハマってて、毎日が楽しいんですよ』

「ほう。それで、誰を推しているんですか?」

『……ん?』

「だーかーら、推し活なんでしょ? 誰を推しているんですか?」

『チベットスナギツネです』

「え? なんて?」

『チベットスナギツネですよ。あの顔に特徴のある』

「あのなんともいえない虚無の顔でおなじみの?」

『そうそう。そのチベットスナギツネです』

「や、まぁ、推すことは人間とは限らないですけど、動物への推し活って何をするんですか?」

『ファンイベントとかあるんで参加したりしてますね』

「チベットスナギツネのファンイベント……?」

『CDについている握手券で推しチベットスナギツネのブースに並ぶんですよ』

「えっ、チベットスナギツネCD出しているんですか?」

『出してますよ! ご存じないですか? セカンドシングルの恋の砂丘ダンスサイトとか』

「いや、知らんわ」

『いやぁ、推しに覚えてもらえるまで何回もブースを周回するんで、CD何十枚も積みましたよ』

「ちなみに、推しのチベットスナギツネって他の個体と見分けつくんですか?」

『虚無顔の角度ですかね?』

「細かいわ」

『必死に顔覚えてもらいたい一心でブースに突撃して、スタッフにすぐ引き剥がされながらもお話したり』

「どんな話をするんですか」

『あー、もしお腹すいたら僕のこと食べていいんで! あー! 見たいな感じで』

「いや、完全に食べ物としてみられるパターンじゃないですか。なんですか? 推しに食べられたいんですか?」

『食べたいほどに愛して欲しいなと』

「やかましいわ」

『いや、ホント、推し活って楽しいですよ。ところで、家にCDが大量にあるんですが、貰ってくれます?』

「いや、握手会のために積んだCDを押し付けたいだけだろ、いい加減にしろ」

「『ありがとうございました』」

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