第48話 エピローグ


「………………」


 俺の視界には、いつもの神殿が映っていた。


 広い部屋には、他にも冒険の途中で死に、復活したと思われるプレイヤーが何人もいて、皆、悔しそうに呟きながら部屋を出て行った。


 いくらガルネシャでも、一〇〇人のプレイヤーを相手に勝てるとは思えない。


 今からボスダンジョンへ行き直しても、戦闘は終わっているだろう。


 まして、賞金三千万なんて……


 現実に頭が追い付いてきて、俺はその場で情けなく膝を折った。


 床に四つん這いになる俺を見て、周りのプレイヤーが何か言っている。


 でも俺は、一目もはばからず、涙を流しながら床を殴り付けた。


 もうどうにもならないのは解っている。


 でも、そうせずにはいられなかった。


「お兄ちゃん……」

「刀利君……」


 後ろから、俺のように戻って来た和美と澪奈が声をかける。


「気にしないでお兄ちゃん。その、だってあくまで進行を止める薬でしょ? 治すくすりじゃないし。でも」


 和美が後ろから、そっと俺を抱きしめてくれた。


「ありがとう、お兄ちゃん」


 装備越しに伝わる和美の体温が、俺を癒してくれる。


 これは仮想世界に作られた偽物の体温だ。


 本物の俺と和美は離れたベッドで寝ている。


 これは俺と和美にアバターが触れ合う事で、H2が俺の脳味噌の、触角を司る部分に、熱を感知させているだけだ。


 けれど、今はその和美の気持ちが嬉しかった。





 

 次の日の朝、俺は病院に足を運んだが、すぐには和美の病室へ行けなかった。


 待合室でテレビを眺めながら、重たい足を引きずる気が起きるのを待っている。


 あれから、すぐにギルド紅の団がガルネシャを倒したという情報が流れた。


 賞金は紅の団のみんなで山分けしたらしい。


 薬は完売して、もう手に入らない。


 ラスボスを倒して賞金一〇億円をもらって、借金を返しても、ヤクザに殺されないだけで、和美の病気が治るわけじゃない。結局和美は……


 なんだかそう考えると、何のためにハーフ・ハンドレッドをやっているのかわからなくなってくる。


 俺が重たい息を吐いて、腰を上げようとした時、テレビのニュース番組が、次のニュースを読み上げた。


「では続いて最新医療情報です。●●病に完治の兆しか?」

「は?」


 俺はその場で硬直して、テレビ画面に見入った。


 テレビ画面に映し出された教授の話は半分も解らない。話を要約すると、特殊な、そしてとてつもなく強力な磁界を発生させ、その磁界に患者を晒すというものだった。


 カエルやネズミの実験では、この方法で●●病を高い確率で治せるらしい。


『ですが一つ問題があります。小動物ならば今の実験機でも可能ですが、人間のように大きな生き物に同様の効果をもたらすには、さらに強力な磁界を発生させる必要があります』

『ではその機械を作ればいいのですね?』

『それが、計算したところ装置の開発にはおよそ五億円かかります。それにまだ人間サイズの動物、例えば大型の猿などで実験をしてみないと、効果を立証できません。あくまでも計算上の話ですから、資金を出してくれる人が』


 俺は息を吞んだ。


 五億円。ハーフ・ハンドレッドの賞金は一〇億円。澪奈と山分けしても俺らは約六億六千万円もらえる。


 この教授に人間用の装置を作ってもらって、余ったお金で腕の良い弁護士をつけ、ヤクザに父親の借金は関係無いってすれば……


 俺は興奮を抑えられず、その場で強く握り拳を作った。


 助けられる。


 和美を助けられるぞ!



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 人気があったら本格投稿したいです。


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 本作を楽しんで頂けた人は私がMF文庫Jで書いた

【忘却の軍神と装甲戦姫】

 をオススメします。


 また、カクヨムに投稿した

【パワードスーツ女子高で最強少年兵がコーチすをする】

【兵站裁判・補給物資を手に入れるのは俺だ!】

 もオススメします。

 この二作と本作と【最強の格闘技は何だ!?】に出てくる桐生さんは全員血縁者です。そう思いながら読むと面白さが変わるかもしれません。

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借金返済のためにフルダイブゲームを最速クリア! 鏡銀鉢 @kagamiginpachi

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