第7話 比留間②

凄惨な事故現場の中、1人老人風の男が去っていく。

先ほど杖をついていたにもかかわらずしっかりとした足取りでしかも段々と曲がった背中を真っすぐにしていく。

まるでそれは人類の進化を表す図のようにも見えた。

「ちょっと、待てよ」

スーツを着た七三分けの男がその背中を呼び止める。

先ほどまで老人のフリをしていた男が立ち止まる。

「いったい、あんた何者なんだ?」

七三分けの男が聞く。

男は振り向いて笑う。

「俺は比留間来人ひるまらいと。比較の、留守の、間合いの、往来のらい、人見知りのひとで比留間来人。次は誰の番だ」

男は再び背中を向けて駅のホームを去っていく。

男を止めるものは誰もいない。


                                かん


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次の番は誰か コンタ @sourgrape

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