第8話 エピローグ

「御堂はなぜ須賀沼のこと探してたんですかね。見つからないなら奴にとってはそのほうが都合良かったはずなのに」

「御堂自身が探していたわけではないと僕は考えている。御堂はおそらく、姉と須賀沼の執念に突き動かされていたのさ」

「鮠眉さんってロマンチストなとこありますよね」

「ほっとけ。まあ御堂に理由があるとすれば罪悪感情だろう。須賀沼自身の考えは御堂もわかっていたはずだ。だがそれを手にかけてしまった。愚かさを諌めるはずの姉も既に亡く、奴自身にも苦悩があったんだろう」

「じゃあやっぱり全ての元凶はハングドマンかもしれないこの元生徒ってことですよね。許せねー」

「正しさは何も救わない。僕は御堂ミサキを封じ込めてしまった。依頼人が犠牲になったのも僕の所為だ。お前たちも巻き込んだ。申し訳ない。だが僕が請け負ったものは一先ず幕を引いた。いつかハングドマンの真相に辿り着くことがあるとしても、今はもう深追いしないことにした」

「しっくりこないっすよ俺は」

「やはり真っ直ぐだなキミは アキが言ったとおりだ」

「その、アキってどなたですか」

「いや、なんでもない。今回の報酬だ。受け取ってくれ」

「でも依頼料ってもらわなかったんじゃ」

「タダ働きとはいかんさ。また何かあれば頼む」

「そすか、じゃあありがたく。俺そろそろ帰ります。風呂に浸かって休みたい気分です」

「ああ、じゃあな」






鮠眉さん 鮠眉さんってば


……すまない 知らないうちに眠っていたようだ


相変わらずですね鮠眉さんは カップ麺ばっかり食べて さすがにちゃんとお布団で寝てくださいよ


どうして


うーん 少し顔が見たくなりました なんてね


生きててくれたのか


いえ そうじゃないです でも少しだけ時間がもらえました だからひと言だけ伝えたくて 鮠眉さん もう私のことで苦しまないでください あれは私が自分で決めた結果なので


酷なことを言うな 僕の所為で キミは


ちがうんですよ これは本当 あなたには あなたの人生を生きていってほしいんです それだけ 伝えたくて そろそろアズサも待ってるんで私いきますね それじゃあ


待ってくれ! 塔雨くん! まだ僕は!



 鮠眉は応接間の天井を見上げた。全身が軋むように痛む。

「僕には無理な話だよ いつか必ず いつか」(了)














(おまけ)

「んだよ! 報酬って出前のクーポン券じゃねえか!」



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