04 報告:幸四郎の受難

  

 しびれた足を引きずりながら俺は神殿を後にして、エキドナの居る食堂へ向かった。

 恐らく、相変わらずエキドナは飲み食いしているんだろうな。彼女は、珍しくて美味しいモノや美味しいお酒が有れば満足する。下半身が蛇になるから元々、蟒蛇うわばみ並みに大酒飲みなのだろう。底なしかも知れない……。


 食堂というか、居間に戻るとまだエキドナ達は宴会を続けていた。

 予想通りだった。エナさんは、大食いの大酒飲みだから仕方がないとしても、付き合う者にしたらたまったもんじゃない。


 卯月の父親は、どうやら無事のようだ。エナさんに対して、鼻の下を伸ばしてウヒョウヒョ見てたから心配したんだよ。ふぅ~。良かった。鼻割り箸の刑にならなくてよかった~。


 それでも卯月の父幸四郎は結構飲んだのか、赤ら顔で鼻の下が伸びっぱなしだ。

 良いのか? 昼からそんなに酔っ払って、婆ちゃんや奥さんに怒られやしないのか?


「エナさん、大丈夫ですか? 結構飲んでますよ」

「セイヤーマダマダ序の口かしら……。

 コーシロー。お酒、終わったわよ。

 イカはもう堪能したから、違うヤツ持ってきてほしいかしら」

「はっ! 分かりました。サザエの壺焼きなんか、いかがでしょう」

「分かんないから、適当にかしらねぇ」

 

 幸四郎は、そそくさと奥の調理場へと消えて行った。


 おいおい、大丈夫なんかよ~。まだ飲むのかよ? 俺は、怒られても知らねぇよ~。


 


 すぐさま、幸四郎は大きめの御盆に幾つかのサザエを乗せてやってきた。

 御盆の上のサザエからはイイ感じの匂いを放っている。香ばしい匂いだ。


 こ、これは醤油の焼ける香り。そして貝類の甘い潮騒の香りだ!

 おい!早く食わせろ!メッチャ良い匂いがしているんじゃねぇか。


 幸四郎はニヤニヤしながら御盆をエナさんの前に置く。と同時にエナさんがサザエに手を伸ばす。


「どうやって、しょくせばいいのかしら? いい香りがするのだけど、訳が分からないかしら?」

「おっほん。これはですね、ここの所に爪楊枝を入れて……。ほれ、このようにクルンっとほじるようにひっくり返してみると……。

 こ~んな感じで、身が出てきます。黒い所はワタなんですが、これがまた、いい感じに苦くて~酒のツマミに最高~なんですよ。

 あ~ぁ、好みがありますから、無理して食べなくていいですよ~。

 オォ~っと〜~~~」


 饒舌じょうぜつに話す幸四郎。勢い謝って前傾姿勢になった。そして、そのままの体勢でエナさんへ向かって倒れ込んだ。


 危険を感じないエキドナは防御しない。

 幸四郎の倒れ行く先はエキドナの胸。顔面から豊満な、けしからん胸へとダイブした〜。


「ウヒョウヒョ~。おっぱいが、いっぱいですな~。プルンプルンでボインボイン、たまりませんなぁ~~~~!」

「コーシローって、強引かしらね」


 俺は観てしまった。ラッキースケベどころじゃないぞ。あれは、狙ってやったんじゃないのか? 

 おい、お父さんよ! 卯月が見たら軽蔑されるぞ。ってか、いいなぁ~。羨ましい過ぎるぞ! いやいや、おい! いつぞかの三平河童エロかっぱみたいに張り倒されるぞ? いや、アイツは張り倒されてはない。ギリギリセーフか?


 しかし上機嫌なエナさんは、幸四郎を張り飛ばす事無くそのままの姿勢で受け止めている。


 その現場は見事に抑えられた。俺のすぐ後に、卯月を始め母親の弥生と、祖母の葉月も遅れてやってきたのだった。


「アナタ――! なに、鼻の下、五センチも伸ばしてニヤニヤしてんですか—―! 今日という、今日は、許しませんよ――!」

「ひぇ~……。ゆ、ゆるして――――」


 有無を言わさず弥生は、幸四郎の側に足音を立てる事無く近寄った。と思ったら、弥生のビンタが幸四郎を直撃する。ビンタといえども、その威力は凄まじい。幸四郎は、三メートルは吹き飛んで床を数回バウンドして白目剥いて痙攣けいれんしている。


 神代家、恐るべし――。 この女系家族は格闘家族だった事を忘れていた。

 もしも俺が卯月と一緒になれば、目の前の光景が俺の近未来なのかと思えば怖くなってきた。


「お父さんたら……。相変わらずね。

 まぁ、エナさんだから仕方が無いわよね。だってエナさんは妖艶の美魔女だから、男は見惚れちゃうでしょう。

 聖也さん、もう用が済んだんだから、おいとましましょうか」

「えっ⁉ てか、卯月ちゃんの実家だからユックリしなくていいの?」

「いいの、いいの。又なにか有ったらすぐに帰って来れるしね。だって、レオンがいるからひとっ飛び~じゃない?」

「まぁ、そうなんだけど……。あんまり妖獣をアッシー君替わりにするのもどうかと……?」

「分かってるわよ……。でも私、この状況でいつまでも此処に居れないじゃない」

「あぁ、そうだな……。だよな……帰ろうか?」

「—―――うん……」


 まぁ、そうだよな。折角浮島の妖怪を倒した報告会だったのに、待ち構えていたのは開戦の如く薙刀を構えていたから、そりゃ~身内に幻滅するのは仕方ないよな。おまけに父親の幸四郎は、エナさんに色目使ってラッキースケベした状態を観てしまったから、居心地悪いよな。


 この後、幸四郎と弥生の熾烈なバトルがまだまだ続く予感がするのは、気の所為なのか? 試しに卯月に聞いてみた。


「卯月ちゃん、お父さん、大丈夫かなぁ~?」

「多分、大丈夫じゃない? いつもの事だから……」

「えっ……⁉」

「お父さんはね。毎回、毎年の祭りや年末年始の時に、バイトの巫女さんに鼻の下を伸ばして、お母さんにお仕置きされているのよ。

 私、もう見飽きちゃったから、多分……大丈夫じゃない……?」


 うぇ、マジか~~! 顔立ちからしたら明治維新の顔をしていたから、厳格な親父をイメージしてたのに、ただのスケベ親父じゃねぇか~!


 いやいや、俺は幻滅はしてないぞ。むしろ親近感が湧いてきた! 

 お父さん、今度都会のお姉ちゃんの居る飲み屋に一緒にいきませんか?

 な〜んて、思っちゃったぐらいだ。



「エナさん、そろそろ御暇おいとましましょうか?」

「え~~~~。まだ、サザエしょくしてないのよ~~」

「サザエは、いつでも食べさせてあげるから、早く帰りましょうよ」

「分かったわょ~。じゃあ、帰りましょぅ」


 いくら魔界の女帝と云われるエキドナも、卯月の醸し出すオーラとこの場の雰囲気を読んで素直に従ってくれた。 ありがとう、エナさん……。



じゃあまぁ、御馳走様残念ねぇ……」



 居間から境内に出るとレオンは何時の間にか待機していた。結界が無いからレオンも境内に入ってこれる。


 おぃ、早いんじゃないか? 


 遅れて祖母の葉月と母親の弥生が見送りに出てきた。境内にいるレオンを見ると、ギョッとした表情を浮かべた。


 そりゃそうだ。初見で見るとオオトカゲ、ライオン、ヤギの三つ首を持ち、背中に翼が生えていて、おまけに尻尾は蛇だ。

 驚かない訳が無い。丹力が無けりゃ下手すれば、腰が抜けてしまうぞ。


 おい、二人共あごが又大きく開いているぞ!


「ガォ~ン」でた、出ました! 

 前回同様、エナさんを始めてみた時の様にアゴンゲリオンの新型機が二体でシンクロしているぞ。



 婆ちゃんとお母さんを放っておいて、すぐさま卯月はレオンにまたがり、俺達を促す。俺とエナさんはレオンに乗ると、レオンはすぐさま飛び上がる。


 下方では元に戻った婆ちゃんが、途方にくれている様子が見えるけど大丈夫なのだろうか?

 



「あ、あぁぁぁぁぁあ、ワシのスマホにシボレーをインストールし……」


 何か言っているようだけど、高度が上がっているから聞こえないよ。

 ここで、例のニドサンドイッチマンのセリフが出てきた。しかも、で。


「なに、言ってるのか、分かんない聞こえないんですけど?」



 婆ちゃん……。又、今度な……。



 こうして、俺達の報告会は無事に? 終わりを告げ、俺達は帰路についた――。

 いいのか、これで? まぁ、俺達らしい、っていえば、そうなんだけどな~。







 幕間 了


 次話へ続く。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


・さて、次話から新たな物語へと突入しますが、その前に少し休眠しようかと……。

 ちょっと調べ物をしたり、ある程度ストックが溜まり次第投稿しようと思います。いつになるやら……? ^^;



※次回予告!

・インキュバスによってこの世に召喚された魔物はエキドナ。

 次にミノタウルス。

 そしてそして次なる魔物は北の大地で息を潜めて何かを企んでいる。


 三日に一人、頭脳明晰か運動神経抜群の若い男の死体があがる。それは不可思議なミイラになって死体があがっていく。一体何が、起きているのか? 


 そして、聖也達の元に意外な依頼者がやって来る?


 強烈な新たなクセ強いキャラは参戦するのか? 

 未定ですが恐らく参戦します。(;'∀')


 日本の新たな妖怪は参戦するのか?

 もう、参戦しないとダメでしょう。(;'∀')



次編【仮題:髑髏ドクロのみた夢:編】


 髑髏ドクロですが、ドクロべぇは出て来ませんよ~。お仕置きだべぇ~~。ってのは無しです。(笑)ww


 どうぞ、ご期待下さい~!?



  ってか、まだ構想段階で~す。(^o^; 💦💦


 今時点で、三話書き上げ。恐らく、四〇話ぐらい行くんじゃないか?^^;




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Rebellion ~踊る悪魔のシッポ~ 甲斐央一 @kaiami358

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