Epilogue



私のどうしようもない寂しさを埋めてくれたのは、明楽だった。





「アンタ、最近たばこ抜いてないのね」




その言葉に背筋がひやりとした反面、気付いていたのかと少し嬉しいような気持ちも湧いてくる。


母の視線は自分の化粧している姿を映している鏡にあるままだけれど。




「あの、ごめんなさい」


「別に。少しの反抗期くらいあった方が、アンタも人間なのねって思えるからいいわ」


「……」




母とはうまくコミュニケーションをとれない。


それは母からした私にも、同様なのかもしれない。




「お母さん」


「なに」


「私、彼氏できた」




話すなら今かな、と思って、そう伝えると、「そう」といつも通りの興味のなさそうな返事が返ってくる。


けれどふと、彼女はふっと笑って言った。




「今度紹介しなさいよ。私あんまりこの家いないけど、まぁ、都合付けてちょうだい」




そう、母が少しの興味を示してくれたのだ。


化粧を終え、仕事の鞄を持ち立ち上がる母からは、もうその笑顔は消えていて。




「避妊はしなさいよ」


「……!!!」




一言、注意されたのだった。




母が仕事に行ってパタンと閉まる玄関の扉。


けれどいつもと違うのは、いつもより少しだけ気にかけてもらえて、心が満たされたこと。


反対はされなかったこと。


紹介してと言ってくれたこと。




ふふっと私も笑って、明楽からもらった棒付き飴を取り出して舐めた。


イチゴの香りに包まれて、少しだけ、明楽の顔が瞼の裏に浮かんでいた。






これが、愛しい、という感情だろうか。


寂しく満たされていなかった私の心は、明楽ひとりの力でこんなにも変化した。


あいつ変態だけど、いつだって私のことを考えてくれている。




それがとても、心地いいんだ。






それから明楽に電話をかけた。




「お母さんに言ったよ。うん、紹介してって言ってくれた。うん、都合つけてって。……ふふ、そんな張り切らなくていいよ。……うん、うん。私も」








明楽と出会えて、幸せだよ。


だからね、これからもっとたくさんの時間、いろんな景色を一緒に見にいこうね。




恋愛ごっこのようだった私達の恋愛は、これから本物となったの時間をゆっくりと進めていくことだろう。


そんな未来を想像して、彼にまた会いに行きたくなった。










end.

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恋愛ごっこ RIM @RIM0310

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