一輪咲きの花

高黄森哉

一輪咲きの花


 道端に咲いてる花に妄想を実らせてみる。


 世の中には、一株につき、一輪しか花を咲かせない植物があるという。そういった植物の多くは両性花なのだが、ここに雌雄異株のつぼみがあるとする。それは、空想上の、ふぐりのような球根から生えていて、その球根からは陰毛のような根がまばらに生えていて、球根から伸びる一本の茎をひょろひょろとさせている。土壌の栄養が少なかったというよりも、その株の遺伝で徒長しているのだ。その植物は、そのことを気にしない。同族が、立派な枝や茎を屹立させていることと自分を、比べたりしない。むしろ、自分が矮小であることに対し、安心を覚えたりする。それは、苗の頃を、保持したままに思えるからだ。―――――― やがて、つぼみは花を咲かせる。すると、どこからか少女が寄って来て、唐突に、その花をもいでしまう。その植物は、どう思うだろうか。正解は安心する。苗の頃に戻るからである。

 

 そして、僕は道端の花を摘んだ。

 きっと植物が喜ぶから。


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一輪咲きの花 高黄森哉 @kamikawa2001

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