何度転生しても推しが幸せにならないのだが?

余記

いざ転生!・・・あれ?

普通、転生というと前世とは全く違う世界とか・・・そういう事を想像するけど、私の場合はそんなに違いは生じなかった。

と言うか、殆ど同じ?


「知らない天井だ・・・」

いや、知ってるけど。

転生したんなら言ってみたいよね。

残念ながら、意識が戻った時に見た天井は子供の頃に住んでいた家の天井だった。

ただひとつ。

前世と違う事は、前世の記憶を残している事。

私は前世で、推しを狙うストーカーからの凶刃を受けて命を失ったのだ。


「転生に際して、何か希望はありますか?」

女神様に会った時、とっさに叫んだ。

「推しが幸せになる所を見るまで死ねません!」

「分かりました。では、推しが幸せになるのを見れるように転生させてあげましょう」

こうして、私は転生した。

というか、子供の頃に戻ったみたいだから正確には人生をリセットした、という事かもしれない。


と、なると。

最初にやるべき事は、推しの子供の頃の姿を堪能する事でしょ!

キェェェェェ!!

推しの事を思うだけで奇声が漏れてくる!

これがこれこそが、推しを愛する魂の叫び!

その魂のままに推しの家へと突撃しようとする!

みしっ!

「響子ちゃん、学校に行かないで何しようとしているのかな?」

あぁっ!母上どの!

爪が!爪が!頭に食い込んでおります!


そんなこんなで(一応)普通の生活の合間に推しに突撃する事、幾星霜。

いつの間にやら推しも無事にデビューしてアイドル活動を開始したのだ。

キェェェェェ!!

「ちょっと!また、あの奇声の子来てるわよ?」

「ハハハ・・・まぁ、奇声以外、僕の事を本当に応援してくれているみたいだから」

ちょっと!奇声以外って!

しょうがないでしょ?あなたの事を考えるだけで漏れてきてしまうんだから!


そんな生活をしている、とある日。

推し界隈に激震が走った!

なんと、ヒロシ様が結婚するという。

あ。ヒロシ様って、推しの名前ね。

これはもう、突撃するしかないでしょ!

キェェェェェ!!


結婚式会場は見物客で賑わっていた。

みんな、一目、ヒロシ様を見ようとしているが人が多すぎて見える所まで行けていない。

そのうち、ぐぐっ!と人の流れが出来てそれにもみくちゃにされているうちに前の方に押し出された。

そんな中、なんだか怪しい動きをしている人がいる。

「あれ?なんだか今、キラッて光った?」

そしてその不審者の視線は、ヒロシ様に固定している。

そして、その不審者はその光るモノを腰だめに構えて・・・

あっ!危ない!

キェェェェェ!!

ヒロシ様へと突進する不審者に突撃する私。

だけど、その時、おなかにちくりと痛みが走った。




こうして、私の2度目の生は終わりを告げた。

結局、推しの幸せな姿を見るという、私の望みは・・・叶わなかったのかな?

でも、彼はこの後、結婚をして幸せな家庭を築くんだろうな。

そんな事を考えて満足しながら意識を失って・・・


あれ?


普通、転生というと前世とは全く違う・・・という事を想像するけど、私の場合はそんなに違いは生じなかった。

と言うか、殆ど同じ?


「知らない天丼だ・・・」


また、前世の繰り返しをする事になってしまった。

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何度転生しても推しが幸せにならないのだが? 余記 @yookee

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