第20話 喧嘩稼業 進道塾 上杉均
以前書いた、喧嘩稼業のトーナメントで最初に芝原剛盛と対戦したのが、
この空手家の上杉均である。上杉均は熱い男とはこうだ! と言わんばかりの性格をしている。優しいが故に強い。その強さを否定する人間は誰もいない。
上杉均の唯一の師である進道塾の創始者である山本陸が襲われ、上杉均は山本陸に不意打ちが出来るほどの実力者である入江文学の父、入江無一に襲い掛かる。
その少し前のインタビューで、入江無一は山本陸に勝てますか? という質問に対して、「何でもありなら勝てます」とはっきり言った。その事も含めて勘違いして、上杉均は入江無一を襲った。
結果から言えば、入江無一が勝った。しかしダメージは相当なもので、トーナメントの主催者である田島明に殺されたのは、怪我をしていた為だとも言える。実際は殺してはいないが、植物人間になり、死ぬ前に目を覚ました。その時、入江文学は無口な不器用な父から「ありがとう」と初めて言われた。
その「ありがとう」の意味は離婚した時に、まだ幼かった入江文学が父を選んで残ってくれた事に「ありがとう」と言った。
入江文学は、父親の最期をみとり、絶対に田島明を倒すと固い決意をする。その想いは第一試合を見れば分かる。
ここで上杉均に戻る。進道塾には「煉獄」と言う連続技があり、一発目にしっかり入ると、そこから相手が倒れる事も許されない連続技を繋げる奥義がある。
上杉均は入江無一を襲った時に「煉獄」を使った。そしてその「煉獄」は秘奥義であるが為、第三者がいる場合、つまりは見ている人がいる前で、使う事を禁止されていた。ここで入江文学は「煉獄」を自分の富田流の「煉獄」を創り出すことになる。
上杉均は、優しくもあり、仁徳者でもあった。師である山本陸から後の事は頼んだと
言われ、上杉均はそれを断った。それなら破門だ。と言われ実際長い間、破門されていた。
彼が何故、師の言う通り、後を任すと言われ断ったのには、しっかりとした理由があった。それは山本陸の息子たちよりも、遥かに皆に頼られ、好かれ、敬意を持っていたからである。自分が残ると、時間の経過とともに、進道塾が割れてしまうと考えた。それを回避するには、自分から身を退くのが一番だと、上杉均は考えて断った。
そして上杉均が居なくなって、山本陸の一番弟子は上杉均であるが、他の強い弟子たちも進道塾から去って行った。それは波紋のように広がりを見せ、進道塾から文派を作っていくほどになってしまい、誰もいない進道塾になった。
山本陸が去った当初は後を継いだ、山本海だったが、上杉均が去ってくれて喜んでいた。しかし、自分では誰もついて来てくれない事に気づき、自分の愚かさを知る。上杉均が何故、自ら身を退いたかも考えもせず、自分の事だけを考えていた自分を恥じる。
彼はボロアパートに住む、上杉均の元へ行き、頭を下げようとすると、止めてくださいと上杉均は言い、トーナメントで優勝すれば、念願の田島明と戦える事を考え、
「進道塾を助けて下さい」と懇願する山本海がたった一人で進道塾を10年間守ってきたその孤独との戦いを、上杉均は理解する。
しかし、上杉均は「塾長、違います」と言い「破門を解く。進道塾のために戦え」と言ってくれればいいだけです。と答え、山本海は涙ながらに、上杉均を進道塾に復帰する。喧嘩王の異名を持つ上杉均が帰ってくる!!! それを知った塾生が全国から本部道場に集まる。
全国から集まった塾生たちは、本部道場からあふれ出し、道路を埋め尽くした。その数五万人が集まった。
「俺たちの学んでいる“進道”は地上最強の空手である!! そしてその俺たちの進む道の先にあるものは最強! 道が途切れれば道を作り、道を邪魔するものがあれば排除する!! 俺たちの進む道の邪魔になり進道の最強を阻むものは、俺の拳ですべて排除する。最強への道は俺が作る!」
「てめぇら黙って俺について来い!!」
「押忍!!!!!」五万人が一斉に答えた。それは道場からあふれた皆の心をひとつにした。
この上杉均が戻り、10年の年月が流れたが、再び完全に一人の元で一つになった。
漫画や映画等のキャラクターたちに光を当ててみた。 春秋 頼 @rokuro5611
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