第23話 冒険者ランク試験 その2

 さて、冒険者ランク試験だ。

 俺の模擬戦の相手は誰だろう?

 すると、王都冒険者ギルドの副ギルドマスターキリンが、地下闘技場の入り口に目を向けこう言った。


「さあ、新ギルドマスターの許可は出たわよ。入ってらっしゃい」


 その言葉を合図に出てくる出てくる。

 総勢二十四人の魔法使いが入ってきた。もちろん、冒険者たちだ。

 地下とはいえ、けっこう広い闘技場もこれだけ入ると狭く感じる。


「んなっ! こいつら、王都冒険者ギルドに所属する魔法使い全員じゃねえかよ!?」

「みんなでどうするにゃあ?」

「まさか、皆さんでコミュさんの相手をする訳じゃ無いですよね?」

「こんなにいたんだ、魔法使い……」


 冒険者チーム『妖精女王ティターニア』の面々も驚いている。

 約一名、少しずれていたが気にしない。


「くくく、すまんな。自称、大魔導師のアーク・ウィザードのお坊ちゃんよ~」

「俺たちゃ今までの王都冒険者ギルドの待遇が気に入ってるんだ! お前ごときに邪魔されてたまるかっての!」

「お前が大魔導師だ? はっ、そんな戯れ言に俺っちが騙されるかよ! どうせその魔法学園の制服も、かっぱらってきたもんだろうが!?」

「たまにいるんだよ、実力もねえのに正義感振りかざす魔法使いがな」

「大人しくしてれば、同じ魔法使いの後輩として可愛がってやったのによう」

「ふん、貴族が押し込んだギルドマスターなんぞ、俺たちがぶっ潰してやる! いくぞ、やろうども!」


 そして、始まる魔法の詠唱。


「「「「「「万能なるマナよ。炎となりて敵を食らい尽くせ。ファイアーボ……」」」」」」

「はい、転移っと」


 当然、呪文が完成する前に転移させた。

 まあ、ここは闘技場で魔法を使っても良いように防護壁が張られているので撃たせてやっても問題はなかったが……

 長すぎ!

 呪文が長すぎてめんどくさい。

 あいつら、ファイアーボールごとき初級魔法に時間かけすぎなんだよ。

 まあ、いい。次だ次。

 六人ほどを飛ばしたから残りは……


「き、消えたぞ」

「やっぱ本物じゃねえか!」

「誰だ、大魔導師なんて嘘に決まってるとか言ってた奴?」

「か、勝てっこねえ」

「に、逃げよう!」


 あっ、みんな逃げてった。

 速いなあ。魔法使いって体力ないのが普通だけど、やっぱ冒険者は違うんだなあ。

 しかし、なんなんだ、あいつら?

 俺の模擬戦はどうなる?

 そんな疑問を胸にキリンを見ると、彼女は苦笑しながら答えてくれた。


「さすがねコミュさん。いえ、まずは謝らせて。ごめんなさい。実は、王都冒険者ギルドに所属する魔法使いは評判があまりにも悪かったの。原因は先のギルマスであるシェケナが作った冒険者ギルド禁止項目。内容は『冒険者は貴重なマジック・ユーザーと揉め事を起こすべからず』なんて身勝手なものでね。おかげで、ここの魔法使いはワガママな振る舞いばかり」

「ああ、そういえば妖精女王の皆さんも被害にあってましたね?」

「そうにゃあ、コミュのおかげで助かったにゃあ」

「そうだぜ。コミュはあたいらの救世主だ」

「お礼にこちらのエルフ美少女を差し上げますね」

「…………えっ?」


 ごめん。俺、エルフ大好きだけどサーシャはいいや。

 彼女のおかげですっかりエルフの幻想が解けたよ。

 いや、今はキリンの話。

 そんなこんなで、冒険者世界本部から派遣され副ギルマスになったキリンが、王都冒険者ギルドの建て直しを図るもなかなか上手くいかなかったんだと。

 そこで……


「幼なじみの二人に相談したのよ」

「はあ、それがシゲイズ様とガブリエル様ですね?」

「ええ、そうなの。シゲイズが言うには、王都冒険者ギルドを建て直すにはトップを変えなきゃダメだって。代わりに超強力な魔法使いを据えて睨みをきかせようって。そこで紹介してくれたのがコミュさん、あなたなの」

「はあ、それは理解しました。で、さっきの連中は?」

「ええ、実は今朝早くに発表したのよ。新ギルドマスターが誕生したと。しかも、大魔導師のアーク・ウィザード。そして、前ギルマスが作った冒険者ギルド禁止項目第一条を撤回するであろうと。そしたら、魔法使い全員が怒っちゃって新ギルマスと戦わせろと言い出したの。大魔導師なんて嘘に決まってる。自分達で化けの皮を剥いでやるって。だから、本当にごめんなさい」

「ああ、そりゃ構いません。シゲイズ様やガブリエル様と戦うなら緊張しますがね」


 まあ、中級魔法使いなら百人いても平気だな。

 それが魔法の怖いところ。

 通用しない時はとことん通用しない。


「じゃあ、以上で冒険者ランク試験は終わりと言うことでよろしいですか?」

「ええ、問題ないわ」

「ああ、コミュのランクはどうなるのかにゃあ?」

「あたいはAに銅貨十枚賭けるぜ!」

「では、私はサーシャのお尻さわり放題を賭けましょう。ランクはBで」

「…………ちょっ、おま!?」


 そんな何気ない会話をしていたら、さっき逃げ出した不良魔法使い冒険者たちが戻ってきた。

 一人の助っ人魔法使いを連れて。


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異世界転生した元ヒキニートな俺が大魔導師になれました。さあ、これからヒキニート目指して頑張るぞ! 後藤詩門 @goto0525

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