廃棄の箱(Twitter300字SS)
伴美砂都
廃棄の箱
海野さんが会社を辞めると知って驚いた。同期の中でもだんとつに仕事ができると言われていて、社内のどんな人とも笑顔で話していた。
「あの、どうして辞めるのか、聞いてもいい」
尋ねると少し間があって、海野さんは言った。
「廃棄の箱」
「え」
「いつも、私ばっかりしてたから、嫌んなっちゃったの」
フロアのプリンターの横には、いらない紙を入れる「廃棄の箱」がある。箱が一杯になると、紙は縛って回収に出される。らしい。言われてみればわたしはしたことがない。
「あふれちゃえばいいなって思って」
いつものようににこっと笑って、海野さんは去って行った。わたしは手に持っていたミスコピーの紙を、廃棄の箱のいちばん上に、そっと置いた。
廃棄の箱(Twitter300字SS) 伴美砂都 @misatovan
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