第2話 心得

「で、ふみ兄さん。ゆうにも教えるんだね。」


「ああ。教えることにしたよ。両親にも確認を取ったから一応は大丈夫だ。」


凛。ゆう。俺。だけがいる部屋で話し合いをする

これは恒例行事みたいなものなので見慣れた。

見慣れたと言っても俺が教えたのは凛と...後はあいつだけだけど...


わかりやすいようにゆっくり説明していく


「ゆうはもう9歳だよね?だから大事なお話があるんだ」


「うん。もしかして、さっきの化け物のこと?」


「って...。勘がいいな。ていうか怖くないのか?」


「全然怖くないよ。人が一番怖い生き物って知ってるからさ」


...

本当に9歳か?小学3年生らしからぬ発言だ

とは言っても活発なのはもちろんのこと、意外と冷静な性格でもあるのは前から知っていた。


「へぇーすごいなー。俺なんて初めて見た時ビビり散らしてたぜ?大泣きだったのを覚えているよ。」


しかもその時現れたのは"愛"だった。

今覚えば全然怖くないものに大泣きしていたなんて...。全く...忘れられん


「ちょっと兄さん...説明......。」


「あー悪い悪い。つい関係ないことを」


我ながら感心しすぎた


「まず。9歳を迎えると見たくないけど見えてしまうものがあるんだ。それが




                  あやかしだ。」




「あやかし...?」


「そう。あやかし。怖い、とか。幸せ、とかは言えはするけど見えないものだろう?だが妖とはこういう人の気持ちが具現化して...いや、形を持って現れるんだ。」


だからさっき焦ったのは非常に危険な妖だったから。怨み。やつは最悪だ、雰囲気からして違う。見たらすぐわかる、マイナスのことしか秘めていないような。


「ねぇ。ふみ兄。あれの説明も忘れないでね。絶対に必要なあれの」


そうだそうだ。この一族として絶対に必要な物がある。

それを忘れた俺は超重罪


「そして必要なのが、この..."数珠"だ。これは妖達を封じることができる。」


「閉じ込めるってこと......か......。」


「これには強力な力があるから絶対持つようにしてね。その力っていうのは...」


俺は以下のように説明する




ざんれつばくいんおんあつしゃく基本封法きほんふうほう




せいやくしん天秤封法てんびんふうほう




基本封法は

妖単体に当てていく力で、一番使う封法


天秤封法は

基本封法とは違って一回で超広範囲に当てることができる、しかし天秤と言うだけあり数珠はぶっ壊れる。


代々紡いできた家にある掛軸にそう書いてある。難しい漢字で。


「これから僕はこいつらと戦わなくちゃいけないんだ......」


「ごめんな。いきなり言われても受け止めきれないよな」


ゆうは俯いたまま手を膝の上で握り、複雑な感情になっているようだった。



しかし






「でも。僕やり通すよ。どんなに苦しくても諦めないよ。」


何を言うかと思ったら...


「あぁ。ゆうは最高な男の子、漢だな!」


子供ながらに何かを抱えるというのは将来に影響する


子供の時くらい無邪気で、楽しくて、ほのぼのした日常を送りたいはずなのに


それが9歳で終わってしまうだなんて


俺は正直許せなかった

だからめちゃくちゃ泣いたり暴れてたのかなーなんて思う


ゆうみたいに、こんなにすんなり受け入れてくれるなんて本当に素晴らしいことなんだ


心の中でこう祈るよ


普通の日常を奪ってしまってごめん。

必ずゆうの身に危害が加わりませんように


これがだらけた封気人ほうきびとが願う事だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

これなぁに? @shun030

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ