第6話

 「おい、おまえ。良い子になってきたようだ。良い子菌がでてきたな。」


 なんど運んだだろう。

 そんな風に、ひとりのもったいないおばけが、僕に声をかけてきた。


 「良い子菌?」

 「そうだその豆を見ろ。おいしそうだとは思わないか?」

 僕はかかえていた豆を見る。

 くさい。

 くさいはくさいけど、なんか知ってる。いやな食べられない匂いじゃない?

 そうだ。

 これはなっとうのにおいだ。


 「食べてみて良いぞ。」

 え~。

 ぼくはなっとうはきらいだ。

 でもなんだろう。今まで運んできたかびだらけのお豆と違って。なんかつやつやしておいしそうなきがしてきた。


 パクッ。


 あ、おいしいかも。


 「たべられるだろう?」

 「うん。」

 「それはおまえが良い子になってきたからだ。」

 「良い子に?」

 「食べ物に感謝して、たべものを大切に思ったのだろう?そうすると悪い子菌が出なくなって、良い子菌がでてくるんだ。悪い子菌はかびという。良い子菌は麹という。ぼうずはしっかり考えて、良い子菌を出すようになった。さぁ約束だ。おうちにかえそう。」


 ピカン!


 もったいないおばけの目が光ったよ。


 「すすむちゃん、朝ですよ。早く起きてね。幼稚園遅れますよ。」

 ぼくの身体を優しく揺らすママ。


 ママ?


 ママ!


 ぼくは思わずママに抱きついて泣いちゃった。


 「あらあらどうしたの?怖い夢でも見たのかしら。もう大丈夫よ。さぁごはんたべましょうね。」


 用意されていたのは、なっとうとお味噌汁とご飯。

 なっとうもお味噌汁も、とってもおいしくって、良い子菌の香りがした。



 (完)

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もったいないおばけ 平行宇宙 @sola-h

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