第5話

 「たべものに感謝はあるか。ありがとう、って言えるか?」

 「作ってくれた人にありがとう。運んでくれた人にありがとう。おなかいっぱいにしてくれてありがとう。ちゃんと感謝しているか?」


 そんな風に、おばけたちはこどもたちに声をかけていた。


 近づくと、ぼくらよりもずっとでっかい食べ物たちで、まるで小人かううん、細蠅にでもなった気分。

 ここにあるのはまだふつうの食べ物の匂いをしていて、なんかおいしそう。

 こんなにおいしそうなのに、捨てられちゃうの?なんかかわいそうだなぁ。


 ぼくは、みんなといっしょに臭い臭い方へと、豆をかかえて運んでいく。

 運ぶ内にどんどん臭くなって、運び終わるときには、カビだらけ。

 持っているのも、最初はいやだなぁばっちいなぁ、って思ってたんだ。

 くっさいくっさい、元食べ物。


 なんどもなんども運んだよ。


 運んでいる内になんか悲しくなってきた。

 だって、はじめはあんなにおいしそうなのに、ぼくが運んだからこんなに腐ってカビが生えて、もうたべものじゃなくなっちゃう。


 なんとかならないの?

 ぼくが運ばなきゃこんなにならないのかな?

 ぼくが悪い子だから、こんなになっちゃうの?

 ごめんなさい。

 もう食べ物で遊ばない。

 だから、悲しく腐らないで。

 ぼくは悲しくって、申し訳なくって、良い子になるから痛まないでって一生懸命祈ったよ。

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