春です。天使の推し活が始まりました。(世界平和に向けて、その②)

月猫

天使の推し探し。

 人間は、生まれるときに天界から一体の天使を割り当てられる。生涯、その人間を守り続ける守護天使という存在である。


 それとは別に、天使が人間界でを見つけて、勝手に応援する「推し守護」というものがある。


 あぁ、「推し守護」がどんなものか、ここで説明しよう。

 君は、ジャンヌ・ダルクを知っているだろ?


 フランスを救った聖女ジャンヌ・ダルクを推したのは、四大天使の一人ミカエルだった。

 ジャンヌ・ダルクがミカエルから啓示を貰ったのが12歳のとき。

 農家の娘である自分に何ができるのかと思っていたが、彼女は行動を起こす。


 オルレアンでの戦いで、負傷しても戦い続けるジャンヌ・ダルク。その姿に心を打たれた兵士たちは士気を取り戻しいくさに勝利した。


 しかしジャンヌ・ダルクは、助けたフランスの国王・シャルル王に裏切られる。最後は、火あぶりの刑で亡くなってしまった。


 もちろん、ミカエルも手をこまねいて見ていたわけではない。

 シャルル王に、ジャンヌ・ダルクを救うようにと天界から働きかけたが、権力を持った人間は、時に「魔」が刺す。要するに、シャルル王は悪魔に推されてしまったのだ。


 そう、人間というものは、天使にも推されるが、悪魔にも推されてしまう生き物なのである。


 さて、話を戻そう。


 天界に春が来ると、天使たちは自分のを探し始める。


「ねぇねぇ、羅芙ラフちゃん。推し見つけた?」

 四大天使のラファエルに気軽に声をかけているのは、同じく四大天使の一人ガブリエルである。


「今、医療界を見学中だが、候補は見つけた」

「人間界が混沌としているから、やっぱり推しは多めにするの?」

「もちろんだ。我部ガブもそのつもりなんだろ?」

「うん。『カクヨム』ってところで、見つけてる。作家を応援するのが、僕の仕事だからね。でも、出版ってことになると時間もかかるし、途中で『魔』に邪魔されるし、今はネット小説の作家を応援することが多いよ。ところでさ、さっきから実嘉ミカちゃん険しい顔してない?」


 我部ガブが見つめる先には、眉間にしわを寄せたミカエルが人間界を覗き込んでいた。


「今回の『推し活』大変だからなぁ。戦争が始まったし……。俺だって、医学界の他にヒーラー界まで、推しを探しに行っている。実嘉ミカの場合、平和へと導く力を持てる人間を探さなきゃならないから、そう簡単には見つからないだろう」

 

 そう言うと、羅芙ラフは大きくため息をついた。

「あらぁ、大天使様がそんなに大きなため息をしちゃ駄目ですわ~~」


 羅芙ラフの肩をポンポンと叩いて声をかけたのは、四大天使の一人ウリエルだ。

「そういう宇梨ウリは、どうなんだよ」

「こういうときこそ、芸術ですわよ。愛・平和・祈り。これらを込めた歌や絵を届ける人たちを探しています。ところで今回、瑠使ルシさまは、どうされるんでしょう?」


 我部ガブが、背中の大きな羽根をブルっと震わせ言った。

「天使と悪魔の二刀流の瑠使ルシちゃんは、世界の破滅を望んでいる権力者・不知プチさんんを推すかもしれないね。だって、悪魔に推されちゃったら人間界はもっと酷いことになる。そうしたら、僕たち天使と悪魔の戦いも避けられなくなるからね。ここは瑠使ルシちゃんに頑張ってもらいたいところだ!」


「そうだな。我部ガブ宇梨ウリ、一刻も早く『推し』を見つけて『推し活』に取り掛かろう。実嘉ミカぁ、俺たちは一足早く人間界に行って来る。お前も頑張れよ!」

 

 こうして天使たちの推し探しが、今、始まった。


                  完



 







 




 

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春です。天使の推し活が始まりました。(世界平和に向けて、その②) 月猫 @tukitohositoneko

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