第十章 贈る言葉

「では、気になる大谷さんの映像を見てみましょう・・・」


画面は球場を逃げるように、車に乗り込む大谷を映していた。


「大谷さん、一言っ・・・どうして今、日本に帰ったのですかっ・・・?」


車は囲む報道陣を振り切り、走り去った。


しかし、そんなことで怯まないスタッフは、必死に後をつけ、成田空港まで追いかけた。

搭乗手続きをしようとする大谷は、取り囲まれた報道陣に苦笑いをした。


「5分だけですからね」

念を押す、マネージャー兼通訳が、大谷の前に立ちふさがる。


大スクープを逃す失敗は避けねばならぬ記者たちは、渋々、受け入れるしかなかった。


「吉岡先輩には、新人の頃から、すごく、お世話になっていました」


ゆっくり、噛みしめるように話す大谷の言葉を必死に録音機の手を伸ばし、収めている。


「だから、少しでも記念になるよう・・・」


「試合を・・・・買っちゃったんです・・・」


いたずらな目は、今回も世界中を魅了してしまった。

感動のエピソードを残し、スーパースターは旅立っていった。


吉岡は、後輩の途方もないプレゼントに。

飽きれたような顔で、呟くしかなかった。


「だから・・・」


「イケメンは嫌いだって、言っただろ・・・」



二刀流(完)

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二刀流 進藤 進 @0035toto

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