第九章 二刀流

テレビのニュースで、「昨日のSNSバズりトップ10」が流れている。

アナウンサーが興奮気味で声を出している。


「昨日は何といっても、大谷翔平がらみのコメントばかりです」


「何と、トップ10の内、6個がそうです」


「第三位は・・・」


「162キロ・・・」


最終回、大谷が吉岡に投げたウイニングボールの球速だった。

自己ベストの速さだった。


そのコメントを聞いた瞬間、吉岡の左手に衝撃が蘇った。

一生で一番の速球を受けた瞬間だった。


「第二位は・・・」


「吉岡って・・・誰?」


アナウンサーはパネルを使って、吉岡の少ない情報をクローズアップしている。


「そして、第一位は・・・・?」


パネルからシールをはがすと、浮かび上がった文字は。


「異次元の二刀流」


・・・で、あった。


アナウンサーが嬉しそうに説明していく。

興奮で目が輝いている。


「大谷選手は、何と、二チームでプレイしたのです」


「最初はロッテで・・・」


「吉岡選手の現役最後の打席に対して・・・」


「次は日本ハムで・・・」


「吉岡選手の現役最後のキャッチャーに対して・・・」


「こんな・・・」


隣の女性アナウンサーが、声を詰まらせる。

瞳が潤んでいる。


「まさに・・・異次元の・・・」


【二刀流!】


二人の声が重なった。



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