第9話 繰返

 家に着いたのは21時近くだった。


 扉を開けると玄関の靴が増えている。


「遅かったわねー。今日は一体どこまで散歩に行ってたの?」

 居間から多美子の声が聞こえる。


「もー父さん、一言連絡くれればよかったのに。心配したんだからね」

 娘の声も聞こえた。


早希さきか?え、いつ来たの?」

「んー少し前」

 居間の隅には少し大きめのリュックと布製の手提げ鞄が置いてある。


尚哉なおやが出張なの。3日くらいは帰ってこないって」

「またか。いやぁ、尚哉くんは忙しいな」

「…ほんとに出張かしらね」

 ぼそっと多美子が言った。


「じいじ、じいじ!」

 可愛い声と共に小さな手がぎゅっと腰を抱きしめる。


「おぉ〜、比奈ひなか。夏祭り以来だね〜」

 可愛い可愛い私の孫。今は4歳。こちらを見るくりくりとした大きな目は早希譲りだ。

 夏より伸びた髪は早希が上手にお団子にしている。


「見て、じいじ、作った!」

 ずっと握っていたのかヨレヨレになった折り紙を見せる。

「保育園で作ったんだって」

 早希が言う。

「おっ、なんだろ」

「うちゅうじんだよー!」

「えっ、うちゅう…??」

 早希と多美子が笑っている。

「じいじにあげる、どーぞ」

「どうも」


 謎の宇宙人を受け取る。よく見るとちゃんと顔が描いてあった。ニコニコ顔の宇宙人になぜだかほっこりしてしまった。


「ねぇねぇ、あのね」

 比奈は私の腕を引っ張りながら言った。

「んー?」


「今日ね、ヘンなことあったの〜」

「なになに、じいじに聞かせてよ」


 そういうと比奈は耳元で言った。


「れんくんがね、新しいおもちゃ買ってもらったって言ったときにね、口から赤いのがふわぁ~って出たの。本当?て聞いたら本当だよって言いながら、もっと口から赤いの出したの!」


 おかしいよねぇ〜、とクスクス笑いながら彼女は言う。



 ……なんてこった。

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真っ赤な嘘 篠崎 時博 @shinozaki21

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