また怒られました(;^ω^)

草凪美汐.

第1話 第六感

 

 なんだか熱っぽい。

 ぞわぞわする。

 風邪のひき始めのような……でも、だるいって感じじゃなくて、なんか胸が火照るような、いやっ、とっておきのギャグで、失敗した時の後味の悪ーい羞恥……違うな、バンジージャンプを自分でエントリーしておきながら、橋の下を覗き込んで、怖気づいちゃう?……ああ、これは違うな、もっと遠くなったぞ。

 おっと、自分の感情の例えに大事な時間を使ってしまった。

 明日、再テストなんだけどなぁ、私だけ、あのこだって勉強してなかったのになぁ、ちぃ。

 教科書を一旦閉じて、両腕をぐーんと上に伸ばした。試しに体温を測ってみると36.3℃、しっかり平熱だ、まあ、そうだろう…………しかし。

 なんだか落ち着かないので、狭い部屋の中を往復したりして。

 そんなことをしても、途切れた集中は戻らない、ので。

 じゃあ、違う特殊な集中を試みるか――。


 …………・・・…………・・・…………


 すると、おっぷ。

 今度は、ぽわんっと、こそばゆさが湧き上がってきた。何かが右手を支配する。じんわりと手に汗が滲み出て……あらら、恥ずかしいじゃないの、これは。

 私が拭いてもしょうがないけど、手近なタオルで手を拭いて、「平常心、平常心……」と念仏のように唱えてみた。

 効果は後で聞いてみよう。

 


「ただいまーっ」

 いつもより、ちょっとだけ遅くに帰ってきた。

「おかえり」

 私は、待ち構えていたようには、見えないようにしたつもりで、居間のコタツでみかんを食べている。

「お母さんは?」

「風呂」

「早っ」

 手も洗わずに、コタツに入ってきた。

朱莉あかり、今日、誰かと会って来た?」

「内緒……」

 目が泳いでいる。

「ふーん……」

汐莉しおり言いたいことがあれば言えば?」

 やけに早口。

 冷やかしたい気持ちは上手く隠せなかったみたいだ。

 じゃ、遠慮なく。

「朱莉って左側、なんだね」

「は?」

 右手を上げて、グーチョキパーをして見せた。

「手汗、なんか言われた?」

「あっちのほうが、かいてたわよ!」

「えーっ」

 途端に感触を思い出して、気持ち悪くなる。朱莉より先に風呂に入ろう。

「それより、明日、再テストでしょう。なんで呑気にコタツでみかん食べてるのよ、勉強は?」

 朱莉の反撃。

「誰かの乙女心のせいで集中力が削がれたの、代わりに受けてよ」

「……それは違うでしょ」

 朱莉の目がミジンコでも見るように細くなる。

「いや、そのほうが効率的だって。私たちの特殊能力を最大限に発揮できる!」

 成功報酬のつもりで、朱莉の前にみかんを積み上げた。

 


 お風呂場のドアが開く音がした。

「お母さーん、汐莉、また双子を悪用する気だよぅ」


 



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