epilogue

「——オラそこっ! モタモタすんな! さっさと復興して【叛者】たちの力になるぞ!」

「おおっ!!」


【月】が煌々とジャンブルの街並みを照らしている中、建築士の主導の下、復興が行われている真っ最中。

 鋭い声は響き渡り、節々に過激さがにじみ出ているがそれに文句を言う人はい一人もいない。むしろ誰もが笑顔。

 明るく振る舞い、炊き出しで賑わうその光景はまるでお祭りの様だった。

 それを、木材を運んでいるリヴィとシャーリーが二人揃って眺めている。


「みんな、これだけの被害があったってのに、随分と元気だな」

「そりゃそうだよ! なんてたって、六百年ぶりの【おひさま】の光を目撃できたんだからね! 一瞬とはいえ、大きな気力にはなるはずだよ!」


 あの時、リヴィたちを包み込んだ日の光。

一瞬。砂粒ほどではあるが、神の魂を傷つけたことによって『取り戻す』ことが出来たあの光を全人類が目撃した。


 それは人類にとって何物にも代えがたい活力になることだろう。【おひさま】を完全に取り戻すということにおいて、【おひさま】を見たことがあるのとないのとでは、希望の度合いがまるで違う。

 今まで微塵も乗り気じゃなかった人も、戦う気にはなるだろう。それはそのまま、神の打倒へと繋がる。

 一歩、また一歩と【おひさま】のある世界へと——。


「とりあえず、他の人たちの想いは一旦置いといて。リヴィはこれから大変になるの自覚してるよね? 君自身の命の重さも」

「ああ、勿論。ちゃんと分かっているよ」


 木材を置き、そこに腰かけてリヴィは【月】を見上げる。【神よけの陣】の力——【嫉妬】を手に入れて【オルタナ】となったことで効力を取り戻した【月】。

 それだけ聞けば大団円だが、【月】の基点の一つとなったリヴィの命の価値はもうリヴィだけのモノじゃない。


 そのうえ、神が一度降りてきてしまったことで、地上と向こうに繋がりが出来てしまった可能性がある。それを考えれば【月】が戻ったとはいえ、安心することは出来ない。

 なんにせよ、今の生活が期限付きだと言うことに変わりはない。人が神を打倒するか、神が人を滅ぼすか。待ち受ける未来はその二択だ。


「俺がなんになったところでやることは変わらないさ。アンリと、そしてシャーリーも。一緒に【おひさま】を見る。今更、死ねない理由が一つ増えたところでどうってことないよ」


 そう言い切ると、リヴィの双眸にミーシャの料理を持ってやって来るアンリの姿があった。

 それを見てシャーリーも微笑む。


「ま、そういうことだよシャーリー。一つ一つやりたいことを叶えていこう」

「だね。それじゃ、まずは三人でご飯だ」


「兄さーん! シャーリーさーん! ミーシャさんのご飯、一緒に食べましょう!」


 ミーシャが作った暖かなスープ。それを三人揃って【月】の下で食べる。

 三人で食べるご飯は今までで一番美味しかった——。

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闇夜の淵で兄妹は【おひさま】を希う 睦月稲荷 @KaRaTaChi0112

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