大分県から滋賀県まで。推しに会うため、750キロを突っ走れ!

無月弟(無月蒼)

大分県から滋賀県まで。推しに会うため、750キロを突っ走れ!

「はぁ、可愛いよなあ」

「つぶらな瞳、愛嬌のある顔。見ていて癒されるよ」

「あと、歌に合わせてのダンス。何でこんなに可愛いんだろうなあ」

「本当、最高だよ」

「「ひこにゃん!」」


 これは数年前のお話。筆者無月弟と双子の兄は、滋賀県彦根市のゆるキャラ、ひこにゃんにドハマりしていた。


 ひこにゃんとは、彦根城築城400祭に合わせて作られた、彦根城のマスコットキャラクター。

 赤い兜をかぶった白いニャンコ。一説によるとブームの火付け役とも言われている、大人気のゆるキャラである。


 たまたまテレビで見て、可愛いと思い、ユーチューブで動画をたくさん見て、その度に好きになっていった。

 ひこにゃんはかわいい。かわいい。かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい!


( ゚д゚)ハッ! つい気持ちが暴走してしまった。読者の皆様、どうか引かないでくださいね。



 とにかく、自分と兄はひこにゃんにハマっていたわけで。いつかひこにゃんに会いに行きたいと、常々考えていたわけですよ。

 しかしそれには問題が。当時自分達が住んでいたのは、九州の大分県。ひこにゃんのいる滋賀県までは、遠く離れていたのです。


 しかも自分と兄が勤めていた工場はなかなか休みが取れなかったので、連休を利用して会いに行くこともできなかった……はずだったのですが!


 それは突然でした。

 部品の流通の関係で清算をストップさせなきゃいけないから、明日から五連休。いきなりそんな事を言われたのです。


 五連休かあ。滅多に無い長期休み、何をしようか。いつかも休みがあるなら、ずっと家でゴロゴロしてるだなんて勿体ない。

 そこで思いついたのです。そうだ、ひこにゃんに会いに行こうと!


 というわけで自分と兄、二人で行くことにしました。

 とは言え急だったので、準備なんてできていません。当然、飛行機や新幹線のチケットなんて取っていなかったので、移動手段は車です。

 しかもカーナビが付いていない車で、大分から滋賀まで行くことにしたのです。


 更に当時自分達は、スマホを持っていませんでした。だから家のパソコンでルートを調べて、それだけを頼りに行くしかありませんでした。

 もし途中で迷っても、調べ直しはできません。だけどそれでも、行くことにしたのです。


 調べてみたら、大分から滋賀県彦根市までは約750キロ。遠いなあ。

 どれくらい時間が掛かるかも分からなかったので宿もとらずに車中泊することを決め、準備もそこそこに家を出たのです。


 そして、ここからがアホ行動なのですが。高速代をケチった自分達は、大分から北九州までは高速道路を使わずに、下の道を移動したのです。

 迷いました。大いに迷いました。

 そのため、九州最北端の門司港に着いたのは、午後四時くらい。そこからようやく高速に乗ったのです。


「時間掛かっちまったなあ。帰りは素直に、高速使おうか」

「そうだな」


 さあ、そこからは高速道路を、ビュンビュン飛ばしていきました。

 高速と言うと、サービスエリアでそこでしか食べられないものを食べるという楽しみがあります。

 山口県下関のフグ。広島県のアナゴ飯。兵庫県の明石焼き。たくさんご当地グルメがありましたよ。

 だけどごめんなさい。それらは全部スルーしました!


 途中休憩には寄りましたけど、お金を使うことをケチった自分達は、それらを一切食べずに。少し休んだだけですぐに移動していきました。

 なんせ目的地は何百キロも先。しかも途中まで下の道を行くという愚行をしていたため、とにかく急いだのです。


 本当に道はこれで合っているのか。夜の高速道だと標識が良く見えずに、道を間違えてしまうかもしれません。だけどそれでも、ただひたすら突っ走りました。750キロを、突っ走っていきました!


 そうして大阪を抜け、琵琶湖を通りすぎ、辿り着いた滋賀県彦根市。

 その頃になると夜は開けていて、体力はもう限界。だけどそれ以上に、迷わずに無事辿り着いた喜びが、自分達には有りました。


 まだ朝早かったので、彦根城はまだ開いていません。

 だからとりあえずコンビニによって朝食を取り、車の中で少しの仮眠を取って。そしていよいよ、ひこにゃんに会いに行きました。


 そして、ひこにゃんのショーが始まったのです。


「「ひこにゃーん!」」


 大の大人が、声を上げてひこにゃんの名を呼びます。

 だってずっと画面越しでしか見ていなかったひこにゃんが、目の前にいるんですよ。これを叫ばずにはいられますか? いいえ、いられません!


 ショーの時間はそれほど長くありませんでしたけど、夢のような一時でした。

 夜通し高速道路を、飛ばしてきた甲斐がありましたよ。


 というわけで無事ひこにゃんのショーを見て、お土産も買って、楽しい旅行となりました。

 それにしても。休みを言い渡されて次の日には750キロを車で移動しようとするなんて、当時の自分達はやけに行動力に溢れていました。

 今なら体力的にも、絶対に無理ですね。


 何はともあれ、生ひこにゃんに会えて、本当に良かったです。


 ちなみにこの後ですが。

 またしても高速代をケチってしばらく下の道を進み、神戸の住宅街で迷ってしまいました。

 当時の自分たち、何故学習しなかった? 

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大分県から滋賀県まで。推しに会うため、750キロを突っ走れ! 無月弟(無月蒼) @mutukitukuyomi

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