本当にありがとうございました

新巻へもん

昼休みの一コマ

「さすがに収録はねえと思うよ」

 次期収録カード情報をスマホで眺めていたら、何か話しかけられたので返事をする。


「は? 何言ってんだ?」

「だって764年じゃ離れすぎだろ。スペシャルカードで楠木正成が収録されたこともあるが、戦国時代から離れすぎてるのはどうかと思う」


「一体何の話をしている? お前の推しは誰かって話だぞ」

「止せ止せ。こいつはカードゲームのセンゴク☆サモナーと幼馴染のミキちゃんにしか興味がないんだ」

「はあ。まあ、ヒロに推し活の話を振った俺が馬鹿だった」


「いや、だから恵美押勝の話じゃないのか? 太政大臣藤原仲麻呂」

「ちげーよ」


「しかし、さらっと、その歴史上の人物っぽいが、誰そいつって感じの人名がすぐに出てくるのはヒロっぽいよな」

「歴史だけは圧倒的強者だもんなあ。英語はお察しだけど」

「やっぱ、そういうところがアピールポイントなのかねえ」

「だよな。まさかヒロがミキちゃんに告ってOK貰えるとか思えないもんな」


 野島と石川が何か勝手なことを言っている。ここは言っておかねばなるまい。

「やってみなければ、分からんだろ。昔の人も言ってるぞ。為せば成る為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」


「まあ、それはそうだが」

「こーいうのが出てくる辺りもミキちゃんのツボにはまったんだろうなあ」

 ミキのことを気軽に連呼し過ぎだぞ君たち。


「お前らだって、推しにアタックしてみりゃいいじゃねえか」

「推しってのはそうじゃねえんだよな。こう、遠くから見守ってれば満足というか」

「熱い思いを胸に秘めて陰からそっとみたいな」


「それだと、俺の場合もミキ推し? ってのは違うんじゃねえの?」

「まあでも、推しは推しなんじゃねえの」

「だな。しかし、他人のカノジョを言うのはどうかと思うが、尊み秀吉だよな」

 ん? どういうことだ?


「意味が分からん。別に靴を懐で温めたりと……。そういや、手袋をポッケで温めててくれてたことあったな。でも、なんで知ってんだ?」

「いやそうじゃねえ」

「くそ。リア充爆発しろ~」

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